少し前に城繁幸さんがツイートしていたものですが、これを見て「たしかになぁ」と思うと同時に日本のマネージャー・管理職にはまったくと言っていいほどマネジメントするための武器というのがあたえられていないのだな、と痛感します。中間管理職が辛い、というのもまさにこのような権限がない中で部下に指揮をしなければならないからなのでしょう。
しかし実は企業も社員を解雇をするに当たっては非常に厳しい制約があります。マネジメントの手段を奪われているのは、管理職だけではないのです。
IBMの解雇についての話
管理職だけでなく経営者、役員までもマネジメントをするための大きな手段を奪われているという例はIBMの解雇騒動に見られます。IBMでは新しいCEOの元、日本でも多くのリストラを敢行していると報道されました。
もちろん整理解雇をするからにはそれなりに理由があります。2016年、ちょうど1年前に報道がなされた時、IBM側が指名解雇した人たちは次のような勤務実績・勤務態度だったそうです(参照:日本IBM「クビにしたい会社vs残りたい社員」裁判〜法廷の大バトルを完全再現)
- 新入社員が1週間で終えるレベルの研修を2週間かけて行い、確認試験では2回とも不合格だった
- Tシャツ・ジーンズ・サンダルで出勤し、注意されると反論する
- たびたび遅刻・欠勤の連絡を正午過ぎの12時・13時にメールで送ってくる
- 10分程度でできるデータ入力を1日に6~7件しかこなさなかった
これらの主張は会社側であるIBMの主張なので、全てうのみにすることはできないかもしれません。しかし日本の裁判所はこのような明らかに不適格な人であっても、企業はクビにできないと解雇無効の判決を出しているのです。企業の最後の手段である解雇が完全に封じられてしまっているのです。
あなたが管理職だったらどうする?
仮にもしこれを読んでいるあなたが上記のような部下を持つ管理職だったとしたらどうでしょうか?課長もしくは部長代理として働くあなたの部下には、41歳の社員がいます。いつもTシャツ・サンダル・ジーンズという格好で出勤し、度々遅刻してきます。与えた仕事もろくに行いません。研修を行っても、社内試験を通らない状況です。
さて、上司であるあなたならどうしますか?おそらくですが、あなたがどんなにすごい能力の高い管理職でも、この部下に対して何もできないでしょう。上記で紹介した城さんのツイートのように、給与をアップ・ダウンさせる権限は管理職にはありません。もちろん解雇することもできませんし、配置転換をさせるだけの権限もありません。
できるとすれば、厳重注意をしたりなだめたりするくらいのものでしょう。あなたの部下は解雇されることもなく、遅刻や欠勤を繰り返しても、給与をもらい続けるのです。
解雇規制緩和を今やるべき理由
上記IBMの例からもわかるように、不適格な社員を解雇しないことが中間管理職である課長・部長を困らせることにもつながり、他の部下のモチベーションの低下にもつながります。もちろん解雇は乱用されるべきではありませんが、今回のIBMの事例の場合は普通解雇は認められるべきだし、100歩譲っても金銭解雇できるようにすべきでしょう。
現在、日経新聞の記事「求人倍率 バブル期並み 3月1.45倍、26年ぶり」によれば、3月の有効求人倍率が1.45倍になり、正社員だけに限定しても0.94倍と過去最高の有効求人倍率になっています。つまり今ほど就職・転職がしやすい時はないのです。
この有効求人倍率が高い今こそ、解雇規制を緩和すべきチャンスではないでしょうか。金銭解雇が認められ、給与の3ヶ月分をもらって解雇されたとしても、今はこれだけ求人があるので何かしらの職につくことができるはずです。もちろん年功序列で実力以上の金額をもらっている人たちは、給与は下がるでしょうが職につけないことはないはずです。
このチャンスを逃したら、また有効求人倍率が高い時代が来るかわかりません。長州力ではありませんが「今しかないぞ!」と叫びたいくらいです。