【映画評】追憶

渡 まち子

富山県警捜査一課の四方篤は、漁港で、刺死体となって発見された旧友の川端悟と再会する。捜査が進むにつれ、かつて、篤と悟とともに幼少時代を過ごした田所啓太が容疑者として浮かび上がる。1992年、親に捨てられた境遇の3人は、能登半島の軽食喫茶「ゆきわりそう」を営む仁科涼子、山形光男を慕い、家族のような日々を送っていた。だがある事件をきっかけに二度と会わないと誓い、離れ離れになったのだ。刑事、被害者、容疑者という形で25年ぶりに再会した彼らは、心の奥底に封印してきた過去と向き合うことになるが…。

過去のある秘密を共有し封印してきた幼馴染3人の男たちの運命を描く人間ドラマ「追憶」。1990年代の過去と25年後の現代を交錯させながら、殺人事件の被害者、容疑者、刑事が再会するという展開は「ミスティック・リバー」を思い起こさせる。美しく寒々とした北陸の風景、忌まわしい事件のトラウマ、捜査によって次第に明かされる悲劇的な過去。ドラマそのものは堅実なミステリー仕立てだ。

だが、しかし。この何とも古臭いテイストはいかがなものか。スマホ(携帯電話)がなかったら、昭和30年代の話と言っても納得してしまう。いや、むしろ昭和を背景にした方が良かったのでは?とさえ思ってしまう、古色蒼然とした演出で、物語も、音楽も、映画そのものも、あまりに大時代的なので驚いてしまった。ミステリーなので詳細は明かせないが、殺人事件の真犯人とその動機が、唐突すぎて、これまた驚く。犯人を知った登場人物の一人が「なんだ、それ?」と言うが、それはこっちのせりふだ。99分という短さは、何かしばりがあったのかもしれないが、それにしても事件の真相に深みがなさすぎる。役者はいいのだ。主要キャストに若手実力派が揃い、脇役も含めて丁寧な演技をみせてくれているだけに、なおさら惜しい。本作を日本映画の良心的な原点回帰とみるか、時代錯誤とみるかで、評価が分かれるだろう。「俺たちはもっと早く会うべきだった」。この言葉が心に残っている。
【50点】
(原題「追憶」)
(日本/降旗康男監督/岡田准一、小栗旬、柄本佑、他)
(古色蒼然度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。