タワーマンション高層階に住みたいと思わない理由

内藤 忍

イギリスのロンドン中心部にある高層マンションで、大規模な火災が発生しました。多数の消防車が出動して消火活動に当たっていますが、残念ながら上層階に閉じ込められた住人に大きな被害が出そうです(写真はネットから引用)。

建物は1974年に建築されたもので、24階建て。火災の原因はこれから解明されるでしょうが、建物の管理上の問題があったという報道もあります。

タワーマンションは、日本でも急増しています。総務省によれば、15階以上の共同住宅は、2003年には32万5500戸だったのが、2013年には84万5500戸と、10年間で2.6倍増えているそうです。

そんな高層ビルにおける大規模な火災は、国内外で度々発生しています。UAE(アラブ首長国連邦)のドバイでは、昨年一昨年と続けて高層マンションでの火災が発生しているそうですし。中国の瀋陽や韓国のプサン市でも高層ビル火災が発生しています。日本でも広島や東京の江東区での火災の例が報告されています。

日本国内では高層建築物の火災対策として、消防法施行令で11階以上にはスプリンクラーの設置が義務づけられ、カーテンやじゅうたんなどに燃えにくい防炎製品を使うことが義務づけられています。それ以外にも、様々な防災対策が定められ、安全上は問題ないとされています。

しかし、ロンドンの火災の消火活動を見てもわかることは、消防車のはしごは30メートルから40メートルのものがメインで、どんなに長くても14階までしか届かないそうです。それ以上は設置されているスプリンクラーで消火するしかありません。日本の高層ビルは厳しい管理基準があって信頼感は高いですが、海外の国によっては安全性に不安のある場合も出てきます。

実際に火災が発生すると、エレベーターは止まってしまいますから、階段を使って下まで避難することになりますが、多くの人がパニックになって階段に殺到すると、スムースに動くことができるか不安です。また、火災に伴う煙で階段が使えなくなる可能性もあります。

屋上からのヘリコプターでの避難ができる施設もあるそうですが、火災に伴う風や熱が救助活動を阻害する場合もあり得ますし、そもそも大量の人を短時間にヘリコプターに乗せることはできません。

私は旅行先のホテルの部屋や、自分が住む家はできるだけ低層にするようにしています。いくら完全な防災設備が整っているといっても、想定外の火災が発生したら、物理的に逃げられない場所にいると致命傷になるリスクがあるからです。

タワーマンションの高層階は低層階よりも価格が高いというのが世界各国で共通している不動産の価格設定ですが、低層階に住む方が経済的にも精神衛生上もメリットを感じています。

■ 毎週金曜日に配信している無料メルマガ「資産デザイン研究所メール」。メールアドレスを登録するだけで、お金を増やすためのとっておきのヒントをお届けします。

■ 累計17万部となった「初めての人のための資産運用ガイド」など、今までに出版された書籍の一覧はこちらから。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年6月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

【おしらせ】資産デザイン研究所が、8月26日に開催する第6回「世界の資産運用フェア」で、池田信夫、渡瀬裕哉さんがゲストとして登壇します。詳しくはこちらをご覧ください

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。