豊洲は課題のひとつにすぎません|小池知事インタビュー

選挙ドットコム

7月2日に投開票を迎える東京都議会議員選挙が、いまだかつてないほどの注目を浴びています。都議会議員の選挙でありながら、その台風の目になっているのは会派「都民ファーストの会」を率いる小池百合子東京都知事。

豊洲市場問題、東京オリンピック・パラリンピック問題等、都政の諸問題が連日報道されていますが、小池氏はその問題の先に何を描き、どのような目標を見据えて候補者を選んできたのでしょうか?
選挙ドットコムでは、小池氏へインタビューを行いました。

古い議会を新しくするための候補者を揃えました

-選挙ドットコム編集部(以下、編集部)
盛り上がりを見せる東京都議会議員選挙を、どうご覧になっていますか?

-都民ファーストの会 代表 小池百合子氏(以下、小池氏)
今回の都議選を通して、都民ファーストの会の候補予定者たちには、古い議会を新しくして欲しいと期待しています。

従来の古い議会は、ボスがいて、それに従い、忖度ですね、一部利益団体の既得権を守り、都政の人事にまで介入をし、という風習がありました。そんな古い議会におさらばして、都議会議員が都民の代表として、また、選出された地域の代表として都政をチェックする議会にしていって欲しいです。

議院内閣制の国会と地方議会の構造は異なりますが、私は議員が条例を提案していく提案型の議会にも変えてほしいものだと思っています。知事の先を行くような。それに意欲的な議員も増えていったらいいですね。会派の考えに凝り固まらず、それぞれの初心を活かせるように、自由度は大きくてもよい。活発な議論を重ねた後、決めるときは、決める。

少し世界に目を広げてみましょう。ニューヨーク、ロンドン、パリ、それから東京…
現在、国際都市間競争は激しいものがあります。この中で停滞している東京があらためて注目される都市になるにはどうするべきか、私はグローバル視点で都政を考えられる新しい血をどんどん都議会に参入してほしいと思います。彼らがたくさんの新しい提案をしてくれることを期待しています。

-編集部
都民ファーストの会の候補者には、どのような方がいらっしゃるのでしょうか?

-小池氏
現職、元議員、二世・三世議員候補もいますが、公認会計士、弁護士、医師、商社マン、研究者、上場企業の取締役など、様々なバックグラウンドを持った方々がいらっしゃいます。子育て中どころか、現在妊娠中の方が二人もおられますよ
古い議会を新しくするためのスキルを持っている方を選抜できたと自負しています。単なる打ち上げ花火に終わらず、今後の東京都の設計図を描ける人材が集まってくれました。

-編集部
妊娠中の方もいるとは驚きです。女性の候補者も多数いらっしゃるようですが、女性を多数擁立することは意識されていたのでしょうか?

-小池氏
はい、候補者選択時にスキルや志以外で重視したのは女性であることです。候補者48名中の17名が女性で、全体の35%にあたります(インタビュー時点)。
私は女性の議員を増やして3割以上にと、国会議員時代から提唱してきましたが、女性議員比率を上げるには、まずは女性の候補者を増やさなければなりません。

「宝くじは買わなければ当たらない」わけですが、政治家も「立候補しなければ増えない」んです。当たり前のことですね。女性の政治家を増やして、政治の質を変える、民間感覚や生活者目線を持った政治家を増やすためには、まずは優秀な方々を擁立しなければなりません。

実は、私は自民党時代に「選対委員長にさせてください」と騒いでいたことがあったんです(笑)。候補者選択に関われますから。残念ながら、その希望は叶いませんでしたが、都民ファーストの会でやっと意志決定の場を確保できました。

豊洲の問題なんて小さな話なんです

-編集部
知事である小池氏が都民ファーストの会の代表を務めていることに対しては、一部の方からは、「二元代表制が崩壊してしまう」という懸念の声もあがっています。
この件について、小池氏はどのようにお考えでしょうか?

-小池氏
これは今までの自民党都連がそうだったから、そんな懸念が出るのですよね。

舛添元知事も自民党のバックを受けて知事になり、議会も自民党の都議会議員が多くを占めていました。自民党は都議会で都政をちゃんとチェックしていたのか? 高コスト体質について切り込めていたのか? 情報公開をストップさせていたのは誰か? と、疑問をあげたらキリがありません。私は議員によるチェックや提案を歓迎し、コストカットを行い、情報公開も徹底して行っていきます。

東京都知事の私が都民ファーストの会を作ったのは、自民党が今までやってきたことよりも、フランスのマクロン大統領の構図に近いと思っています。マクロン氏は自分で「En Marche!(前進!)」という政党を作りました。インターネットで候補者を公募し、発表した候補者のうち、52%は政治未経験だとのことです。既成政党とは全く関係ない自前の勢力を作り、大統領にも選ばれました。スピード感と改革の方向性が一致すれば、既成政党の力を借りなくても、競争に打ち勝つことはできるケースですね。

-編集部
東京都政や都議選にお話を伺っている中で、フランス大統領の話が出てきたのは少し驚きました。

-小池氏
海外の事例を引き出したのは、国際政治における都市間競争に勝って行かなければならないからです。現在の東京、日本は停滞しているように感じます。

かつてはトヨタや東芝といった「ものづくり」の企業が時価総額でも世界の高位に入る等していましたが、今や目立つ企業はGoogleやFacebook等、在庫を持たない企業ばかりです。そして彼らに共通するのは、国境を持たないことです。
また、電子マネーの世界も日々物凄いスピードで移り変わっています。中国でもお金の電子決済がどんどん進んでいます。人口約13億人を抱えるインドでも電子マネー化が進んでいます。
このスピード感の中で、日本は未だにアナログ1本。危機を感じざるを得ません。

豊洲問題は山積する課題のひとつにすぎません。市場の場所をどこにするのか、この議論に30年かけているうちに、水産関係の物流は半分に減りました。市場の環境はとても早い速度で変わっていきます。なのに、30年前の基準で考えても、果たしてそれは最適解なのかという疑問が残ります

築地から豊洲に市場を移すかどうかは「点」の話です。今こそ「面」、グローバル視点で考えないと国際競争を勝ち抜いていけませんよ。

正しい議会とスピードに溢れる都政を

-編集部
都議会議員選挙はゴールではなく、次の4年間の都政のはじまりだと思います。小池氏が描く東京都、そして都政のビジョンについてお聞かせください。

-小池氏
東京都が首都である役割をしっかり果たせるように正しい議会を作り、スピード感溢れる都政を行います。それ以外は考えていません。

-編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

-小池氏
2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。オリンピックは参加することに意義がある等と言われますね。実は都議選も4年に1回。これに参加しない手はありません。

評論するだけではなくて、自らの手足を運んで行動に移しましょう。投票に行きましょう。自分から動きましょう。

-編集部
本日は貴重なお話ありがとうございました。