アップルが国際的水平分業のビジネスモデルを活用しているのは、とても有名な話です。世界中の優れたメーカーなどに部品を外注しているのです(もちろん、技術力のある日本の企業も部品供給をしています)。
このような国際的水平分業が可能になった背景として、IT技術の進歩によって世界中が結ばれたという事実を見過ごすことはできません。ITによって「取引コスト」が劇的に低下したことによって、かつてアダム・スミスが提唱した「分業」が可能になったのです。
工業製品で国際的水平分業ができるのであれば、農業分野でも可能ではないかと考えました。というか、在庫として保存の効かない農業製品こそ国際分業で無駄なく消費することが望ましいのではないでしょうか?
いまだに日本では「食料自給率」が高いほうが好ましいという風潮があります。食料安全保障という緊急時の概念のようですが、今の日本では、小麦や米が豊富にあってもそれを調理する電力がなくなれば意味がありません。炊飯器がなければ米を炊くこともできないのです。
つまり、石油等の天然資源や工業製品の自給率を無視した「食料安全保障」という概念は、ナンセンス以外の何物でもないのです。
農業分野に関して私はあまり詳しくないのですが、日本は通常の穀物や野菜、果物に関しては「比較劣位」にあり、高級果物に関しては「比較優位」にあると認識しています。大規模農業に適する広大な土地がないからでしょう。
世界中には、通常の穀物や野菜、果物を廉価で美味しく作ることのできる地域がたくさんあります。そういう地域からタイムリーに輸入をすれば日本人の食生活は驚くほど豊かなものになるでしょう。
逆に、日本のお家芸である高級果物をタイムリーに輸出できるようになれば、日本産ブランドの価値がグンと上がることでしょう。
ある程度備蓄の効く農産物もありますが、多くの農産物は日数と共に劣化していきます。廃棄ロスを防ぐ意味でも、必要な所に必要な分を迅速に回す必要があるのです。
農業というと「聖域」のように考えている人たちが日本にはたくさんいますが、農業人口は少なく、農業だけで生計を立てている専業農家はごくごくわずかしかいません。もはや、農家のためというより既得権益を守るための「聖域」となっているのです。そして、その結果、大多数の国民が不利益を被っています。
ダン・ブラウン著「インフェルノ」のように、人口増が食糧難をもたらすという警鐘がなされている時代、農産物の有効利用は世界的に避けて通れない道だと考えているのですが、いかがでしょう?
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年7月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。