世の中には、実にさまざまな人がいる。芸人でも売れる人もいれば売れない人もいる。努力をせずに仕事に有りつける人もいれば、努力が実らない人もいる。チャンスをものにする人、ものにできない人、好かれる人もいれば、なぜか、苦手とされる人もいる。そんな人たちの違いはどこにあるのだろうか。
大谷由里子(以下、大谷氏)は、故横山やすし氏のマネージャーをつとめ、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなど当時、若手だったタレントを次々に売り出した敏腕マネージャーとして知られている。横山やすし氏にど突かれた人は多いが、逆に、ど突いて説教をしたマネージャーは、大谷氏をおいて他にいないとさえ言わしめた。
今回は近著の『また会いたい!と思われる人になる』(WAVE出版)を紹介したい。大谷氏のユニークな人物観察は興味深い。
その数時間は誰かが生きたかった数時間
――いま、生きているのか死んでいるのかわからない人が大勢いる。だから「生きている人」に出会うとうれしくなる。
「パートナーの島田は、初めてわたしに会ったとき、知人に『生きている人に会ったよ』と、喜んで話をしたようです。わたしも『生きている人』に出会うと、とてもうれしい。生きている人の特徴はキラキラしていること。あっ、『この人、生きている』と印象に残った人が何人かいます。」(大谷氏)
「最近、マスコミで話題になっている講師の人がいます。彼女は身内に不幸があったときに、『生きているうちにやらなきゃならないことが、いっぱいある』と気づいたようです。多くの人に気づきを与えたいと思い研修を始めたと聞きましたが、彼女のような人は見ているだけで生きているパワーを感じます。」(同)
――では「生きている」とはどのような態様をさすのだろうか。
「生きている人は、生きることをとても大切にしています。自分だけでなく他人が生きていることも大切にしています。だから人を否定しないし前向きです。そして、何よりも生きている人は、『生きるパワー』をもっています。『生きている人』になるには『生かされていること』に感謝すればいいのです。」(大谷氏)
「私は、阪神·淡路大震災を機に、『生きている』ことを素直に感謝できるようになりました。何気なく生きている今日1日、何気なくすごしている数時間、これって、誰かが生きたかった1日、誰かが過ごしたかった数時間かも知れない。自分の『使命』について真剣に考えるようになりました。」(同)
――私たちは、深く考えることもなく日常を送っている。「何気なく生きている今日1日、何気なくすごしている数時間を、誰かが生きたかった1日、誰かが過ごしたかった数時間かも知れない」と置き換えれば、時間の大切さを理解できるのではないか。
毎日ジェットコースターに乗っていないか
――大谷氏が、吉本興業に勤めていたとき、次のようなことがあったそうだ。
「西川きよしさんが参議院選挙に出られたとき、23歳だった私は、日本一の漫才師、横山やすしさんと向き合うしかありませんでした。それまでは、先輩と2人でマネージャーをしていましたが、先輩が西川きよしさんに、付ききりになりましたから。でも、日本一の漫才師の気持ちなんて簡単にはわかりません。」(大谷氏)
「酔っ払って荒れる、そして体を壊して倒れる。結果、仕事に穴をあける。言わなくてもいいことを言ってはトラブルを起こす。マスコミの取材も容赦ありません。誰かがそばにいたら逃げられたでしょう。けれど、仕事を手伝ってくれる人もいなかったので、逃げることができませんでした。」(同)
――参議院選挙が終わったあとで、次のようなことがあったそうだ。
「のちに常務取締役になられた木村政雄さんから、『人って、みんないいほうにつくやろ。君は逃げなくてえらかったね』と言葉をかけてもらったとき、入社して以来、初めてうれし泣きをしました。逃げないでいた自分を見てくれていた人がいたって。それだけで、報われた気がしました。」(大谷氏)
「世の中には、逃げる人がなんて多いのでしょう。当然のことのように、すべての責任をなすりつける人がいます。誰だってリスクは恐いものです。だけど逃げても始まらない。逃げない人は魅力的だと思います。」(同)
――読者の皆さまに、エッセンスは伝わっただろうか。波乱万丈な人生を送っている大谷氏は、言い訳の多い人、やる気の無い人、甘えの多い人には厳しいとの評判だ。「いま毎日がギリギリなんです!」と言う人は、「いいねえ毎日ジェットコースターに乗れて!」と切り返えされるだろう。最後に人生をどう生きるかはあなた次第でもある。
『また会いたい!と思われる人になる』(WAVE出版)
尾藤克之
コラムニスト
<第6回>アゴラ著者入門セミナーのご報告
セミナーにご参加いただいた皆さま有難うございました。
次回の著者セミナーは8月を予定。出版道場は11月を予定しております。
お問い合わせ先 info@agorajp.com