名前と誕生日は当人にとって特別の意味がある

拙著「説得の戦略」で書きましたが、名前と誕生日のウエイトは、本人と他人との間に大きなギャップがあります。

名前の重要性について、私は銀行員時代の支店長から教わりました。「法人営業になるとみんな君よりも年上の人が相手になる。〇〇さん、〇〇さん、としっかり名前を呼んでかわいがってもらうことが第一だ」と。当時の私は25歳か26歳くらいでした。

デール・カーネギーの「人を動かす」にも、発音が困難なお客さんのフルネームをしっかり口にしたら、相手が感激の涙を流したという逸話が紹介されています。

かように、名前というのは本人にとって格別に重要なアイデンティティなのです。結婚後も旧姓を名乗りたいという人がたくさんいるのは当然のことなのです。

就職面接の時、面接官から「何か質問はありますか?」と尋ねられたら、「〇〇さんは、どうしてこの会社(仕事)を選ばれたのですか?」というふうに、名前を呼んで質問することをお勧めしています。

聞くばかりで退屈している面接官にとって、自分自身のことを話すのはとても楽しいものです。いきおい「この学生となら、一緒に仕事をしてもいいかな」という気になるでしょう。

やってはいけないことは、手紙等で相手の名前の漢字を間違えることです。私自身、過去に何度か漢字の書き間違いをしてしまい、ひどくひんしゅくを買ったという苦い経験があります。銀行時代に上司だった人が、私が弁護士になってから「庄子正比古先生」とすべての漢字を間違って手紙を送ってきた時は、「ここまでくればかえってあっぱれ!」と感心してしまいましたが(笑)

また、誕生日はその人にとってはクリスマスよりも大切な日であることも多いでしょう。
しかしながら、他人にとっては普段と全く変わらない日。このギャップとてもは大きいです。お世話になった人や職場の部下などには、負担感を感じない程度の贈り物をすることをお勧めします。メールやLINEでお祝いをするだけでもいいでしょう。

肝心なことは、相手からの見返りを決して期待しないことです。
人間には「返報性」があると心理学的には言われていますが、忘れてしまうのも、とても速いのです。時々、「あんなに世話をしてやったのに」と人の忘恩を愚痴る人がいますが、それは仕方がありません。恨みはいつまでも憶えているのに、恩義はすぐに忘れてしまうのが人間の性(さが)ですから。

相手が喜んでくれれば自分も嬉しい気持ちになりますよね。それでよしとすべきであって、わざわざ恩義を思い出させるようなことは止めた方がいいでしょう。「恩着せがましい奴だな〜」と思われるのがオチですから。

荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年7月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。