ここのところ、知り合いの起業家がクラウドファンディングを精力的に活用するのを目にしていると、数年前、ネット界隈の新し物好き(イノベーター層〜アーリーアダプター層)が中心だった段階から、市民権をだいぶ得つつあるように感じる。
「ママのノー残業」を目指す経沢さんのプロジェクト
アゴラへの寄稿者でいえば、経沢香保子さんのキッズラインが7月後半から、「ママのノー残業デー」と銘打ったプロジェクトを展開している。サイトでは、「24時間365日勤務」「無給」しかし、「世界で一番重要な仕事」は何か?と少し挑発的に問いかけながら、クラウドファンディングを通じて、キッズラインのベビーシッターサービスを週1回、1ヶ月使える権利をプレゼントするという企画だそうだ。
経沢さんが以前、松田公太さんとの対談でも触れていたが、日本社会でベビーシッターサービスを普及させていくための最大の鍵は、他人に子どもを預けることの心理的障壁をいかに下げていくか。日本では都市部を中心に子育て中の女性が「孤立無縁」となり、最悪の場合は、乳幼児の虐待という悲劇も繰り返されてきた割には、この壁が手強い。
通常だと「先行投資」「バラマキ」的に無料キャンペーンをやるのも一手だが、クラウドファンディングであれば、未上場ベンチャーとしてコストを抑制しつつサービスの認知度向上と利用者とのリレーションシップを深められる。映画やゲームの新作の資金調達にクラウドファンディングを使ってプロモーションとリレーションシップの両立を奏功させる事例はあるが、子育て支援ビジネスの領域で、同様な試みを始めたチャレンジの成否に注目したい。
評価経済時代における新しい与信の形を目指す家入さん
しかし、本当に面白いのは決算書をベースに審査するという従来型の金融サービスの形に加え、家入さん本人もFacebookで述べているように「評価経済時代における新しい与信の形」を目指している点だ。狙いについて、そのうちアゴラにも彼のブログを転載することになると思うが、FBから一部引用する。
「クラウドファンディングにおける支援者数や達成度などを、これからの与信に使うことは出来ないか、と前々より考えていました。支援が集まってるということは評価をされているということ。クラウドファンディングをやってるからこそ出来る。過去の業績や担保などによる、従来の与信のみでは、現在や未来の信用を正しく評価することが出来ないのではないか。一度でも過去に失敗した人や、本来お金を借りられたはずの人がこぼれ落ちてしまう、そのやり方をアップデートしていきたいと考えています。まだまだ仮説だらけだし手探りですが。」
「資金集めの民主化」をビジョンに掲げている家入さんらしい取り組みといえる。
日本の「クラウドファンディング2.0」時代突入
矢野経済研究所のデータ(2016年)によると、2015 年度時点で、国内クラウドファンディングの市場規模は新規プロジェクト支援額ベースで、前年度比 68%増の363億円。最近16年度のデータも発表されたらしいが、おそらく1年前に見込んだ477億円に匹敵、あるいは超える規模で成長しているだろう。
日本の「クラウドファンディング2.0」とも言える段階に入ってきた中で、これからは市場規模の拡大とともに、かつて東証マザーズに女性で最年少上場した経沢さんや、ジャスダック最年少上場経験者の家入さんといったプレイヤーが、どのような画期的なサービスを今後提案していくのか、興味は尽きない。
P.S 「アゴラテレビ」の資金調達にも
そういえば、かつて家入さんの都知事選出馬時に広報を担当したのを機に、数年前は何度かクラウドファンディングの案件にタッチしたものだが、ここ最近はご無沙汰だった。
しかし、ネット上でも期待の声をお寄せいただいているアゴラの冠が付いたテレビ番組の実現へ、この下半期は、本気を出して布石を打っていきたいと思う。企業によるスポンサードがもちろん軸になるだろうが、調達資金の何割かは「草の根の篤志家」から頂くことに意義があるとも思う。
家入さんのところにするか、佐藤大吾さんのシューティングスターにするか、そのうち、それぞれご相談できればと思っているが、「2.0」の潮流の中をプレイヤーとして久々に泳ぐ機会を得られるなら幸いだ。アゴラファンの皆さま、その節はよろしくお願いします!