マインドフルネスは、マサチューセッツ大学医学大学院(英語版)教授の、ジョン・カバット・ジン(Jon Kabat-Zinn)によって確立された理論になる。仏教がベースとなり心理学をミックスさせることで、ストレスに対応する手段としてマインドフルネスを提唱した。ビジネス、瞑想、スピリチュアル、など活用領域もひろい。
いまブームのマインドフルネスとは
今回は、『仕事が速く、結果を出し続ける人のマインドフルネス思考』(あさ出版)を紹介したい。著者は人見ルミ(以下、人見氏)。お天気予報キャスター、報道ディレクターを経て、現在は研修講師として活動中である。いまのようなストレス社会においてマインドフルネスに注目が集まることは「自明の理」なのかも知れない。
多くの、マインドフルネスの書籍のなかにおける、本書の差別化のポイントは「ビジネスにマインドフルネスを転用すること」にある。仕事の効率化と生産性を上げる方法として、マインドフルネスの考え方を活用するという切り口は特徴的である。今回はビジネスに活用できるマインドフルネスの事例を紹介したい。
「連合艦隊司令長官、山本五十六元帥の『やってみせ』は、部下を持つ管理に人気がある有名な言葉として知られています。実はこの後に、さらに言葉が続くのをご存知でしょうか?『話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」(人見氏)
「つまり、大きな器で、どんと肚が据わり、感情が安定してはじめて、人を育てることができる。部下や組織に対してマインドフルネス思考ができている人こそ、本当のリーダーだと言っているのです。」(同)
では、具体的に活用している事例はないだろうか。人見氏によれば、箱根駅伝で青学が躍進した秘密は「マインドフルネス」にあると分析している。
「弱小だったチームを33年ぶりに箱根出場に導き、その後、3連覇を成し遂げるまでに成長させた青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、マインドフルネス思考をうまく指導に活用している1人です。先日、お話を聞く機会があったのですが、普段からマインドフルネス的に物事をとらえていると感じました。」(人見氏)
「たとえば、箱根駅伝で3連覇の快挙を遂げた際、原監督は、調子の波が激しく、よいときはものすごい力を発揮するタイプの選手を往路の3区に起用しました。レース当日、3区の選手はトップから38秒差でタスキを受け、走り始めたのですが、なかなか調子が上がらず、徐々に差が開いていきます。」(同)
青学躍進の秘密はマインドフルネスにあった
人見氏は、そのときの、原監督がマインドフルネスを効果的に活用していたと語る。駅伝では、監督が乗った車が並走して声をかけることができる。どんな言葉をかけるかが選手の走るモチベーションを左右するのでモチベーションを上げる声かけが必要になる。
「原監督が彼に向けて発した言葉を聞き、私は驚きました。『そうそう! そうそう! Perfumeのリズムで! Go Go Go Go!』。その掛け声を聞いて、選手の顔がニヤッと崩れました。もしかしたら、その選手は歌手のPerfumeが好きでよく聴いていたのかもしれません。原監督も選手の表情が見えたのでしょう。」(人見氏)
「さらに『いいぞいいぞ、顔がいいぞ!』と声をかけたのです。すると、その選手は何かのスイッチが入ったかのようにスピードをあげ、先頭を走っていた神奈川大学の選手を抜き去り、さらに2年連続の区間賞にも輝いたのです。」(同)
参考までに、ほかの大学の監督はどのように声をかけていたのだろうか。人見氏によれば、「激をとばす!」監督が圧倒的に多かったようである。このような声のかけ方では、場合によってはやる気をそいでしまう危険性がある。
マインドフルネスは、Googleが人材育成プログラムに活用したことで脚光を浴びた。その後は、フェイスブック、ゴールドマン・サックス、ペンタゴン。日本でも、ヤフー、資生堂、みずほ銀行などに導入されている。事前にメリットとデメリットについて理解することをお勧めしするが、注目のコンテンツであることは間違いなさそうだ。
参考書籍
『仕事が速く、結果を出し続ける人のマインドフルネス思考』(あさ出版)
尾藤克之
コラムニスト
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