ブラック料理店と安倍首相を結びつける文春への違和感

尾藤 克之

アイキャッチ画像は記事より引用

少々前に、加計学園、日報破棄問題、秋葉原駅での安倍総理の演説の反対コールなど、メディアの偏向報道が話題になったことがある。その後、偏向報道は収まったのだろうか。昨日、ある大手メディアのニュースを読みながら「おや?」と思ってしまった。

1つめの「おや?」について

文春オンラインに「おや?」と感じさせる記事が掲載されていた。あくまでも個人的な感覚である。1つめが、「決意の顔出し告発『私はブラック日本料理店に食い物にされた』」(8/30掲載)の記事。谷田真弘(仮名)氏が、就職した日本料理屋の違法行為を告発する内容。しかし、決意の告白をしたにも関わらず仮名にした理由がわからない。

名前を出せないなら、顔写真も出さないほうが良かったのではないか。理由は、谷田氏(仮名)が、大きなリスクを背負う可能性があるからである。記事は会社側の違法行為を批判する内容になっている。しかし、社内の違法行為や、自らが責めを負わされたとき、どのように対峙したのか、解決するために何をしたかがまったくわからない。

解決になんらかの努力をした情報が載っていれば、まだしも、一方的な会社批判が好感されるようには思えない。日本料理という環境もあるだろう。板前は、階級によって明確な職能区分がされている。花板を筆頭に、脇板、椀方、煮方、焼き方と続く(店で異なる)。しかも、この会社の社長は板前出身だから厳しいスタイルであることが推測できる。

板前と言われるのはここまでで板前未満の者は、小僧、アヒルと呼ばれる雑用係になる。板前になるには10年~15年とも言われる。花板を中心にしたヒエラルキーが存在するが、これは大工やフランス料理の世界でも同じ。ピラミッド型のヒエラルキーをもつ業界は少なくない。上下関係が厳しい世界において、権利を主張することが得策とは思えない。

谷田氏は20代と紹介されている。今後の就職にリスクを残してしまったのではないか懸念を感じる。通常であれば、会社とトラブルを起こした人物を採用したいとは思わないだろう。仮名であっても、顔写真が公開されている以上、すべてを内密にすることは困難になる。就職活動中に露呈したら厳しい状況に陥る可能性が高い。

豊田議員の政策秘書の際にも感じたことだが、暴露話は一時的には話題となりメディアも飛びつきやすい。内容次第では副収入にもなるかも知れないが、評判を落とすリスクもある。これまで、暴露話で話題になり、その後、永続的に活躍している人を私は知らない。「公」を「私」にするわけだから、関心を持たれるだろうがお勧めはできない。

2つめの「おや?」について

2つめの「おや?」は、「安倍首相のいきつけ 赤坂・日本料理店は超絶ブラックだった」(8/29掲載)になる。15人いた新入社員は、わずか1年で全員が辞めたとある。しかし、全員が辞めたことと、安倍首相との因果関係は無い。何らかの関係を彷彿とさせる内容に違和感を感じる(アイキャッチ画像は記事より引用)。

次ぎは、たとえ話である。あなたは、取引先をもてなす接待を企画した。場所は赤坂の一流料亭、1人10万円近くかかる。ところが先方社長は店につくなり、「ここは食品偽装で有名になったあの店の系列。今日は大丈夫ですかな。わっはっは」と言われたら、あなたはどのように感じるだろうか。あなたと、食品偽装はなんら因果関係は無い。

お店に入店したところで、その店がブラックかどうかなんて簡単には分かるはずがない。客が有名政治家やエグゼクティブであれば、実態はオブラートに包まれるから、よりわかりにくい。日本料理店がブラックでなにが言いたいのだろうか。ミサイルが飛んできている時に、とある日本料理店のブラックさをこじつける必要性があるのだろうか。

さて、話は変わるが、3年半ぶりに出版をした。タイトルは、『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』(同友館)になる。私にとっては9冊目の本になるが、社内の理不尽にジェームズ・ボンドが立ち向かう設定にした。ボンドなら社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対峙するかをストーリー仕立てにした。

アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月で、「出版道場」という出版希望者のニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。日頃、お世話になっている著者の方や出版社からのご協力もいただき、私も彼らが精魂込めて手がけた書籍紹介の記事を掲載している。

今回はそうしたなかで、記事や企画が編集者の目に留まり出版の実現にいたった。読者の皆さまへ感謝として報告を申し上げたい。

尾藤克之
コラムニスト

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