日本の核兵器保有について

「日本が核兵器を保有する」と言うと、生理的に嫌悪感を持つ人々がたくさんいます。
現実に広島と長崎に原爆が投下され、目を覆うような惨状が繰り広げられたのですから、当然と言えば当然でしょう。

しかし、すぐ近くの北朝鮮が水爆ミサイルを保有しているとなると、もう少し冷静な議論が必要だと思います。

かつての東西冷戦下で(核戦争という)第三次世界大戦が勃発しなかったのは、両陣営が核兵器を保有していたからです。

核戦争が勃発すれば、最悪の場合、地球そのものが滅亡しかねません。
そうでなくとも、回復不可能な被害が発生します。それを回避するため、バランス・オブ・パワーやバランシング・オブ・パワーといった抑制均衡状態が実現していたのです。不幸な地域紛争や局地的戦争はあったものの、核兵器は(決して抜くことのない)伝家の宝刀と化してしまったのです。

かつて、イランが平和利用目的で核開発をしようとしたとき、米国が驚くほどヒステリックになったのは、イランが日本のような核兵器の準保有国になるのを恐れたためだと、ニューズウィーク誌に書かれていました。
「日本が核兵器の準保有国だって!」と、驚く人がいるかもしれません。私も技術的なことはよくわからないのですが、同誌には、日本の原発等の技術力があれば核兵器への転用は容易だと書かれていました(真偽はわかりません)。

北朝鮮が核兵器を保有する動機は、自国がイラクのようになりたくないと考えているのではないでしょうか?
かつて米国は、「イラクが大量破壊兵器を保有している」と因縁をつけて、フランスをはじめとする諸外国の反対を押し切ってイラクを攻撃しました。

もし裏で軍需産業の不純な動機が働いていたとしたら、(武器使用という)理由で北朝鮮が攻撃される恐れがあります。丸腰であればなおさらです。石油という利権がなくとも、武器の在庫が増えるのは軍需産業にとって好ましくない事態なので、在庫一掃を政府に働きかける可能性はあります。

ともあれ、核兵器が(決して抜くことのない)伝家の宝刀として、国家間のパワーバランスを維持する機能のみを有しているとしたら、日本も核兵器を保有することは可能です。

現行憲法でも個別的自衛権は否定されていません。
正当防衛として自国を守る権利は当然の権利です。
だとすれば、他国から軽々と攻撃されない牽制のために核兵器を保有することは、憲法に違反しないでしょう。
逆に、核兵器の悲惨さを身をもって知っている日本こそが、他国の暴走を抑止する目的で核兵器を保有する唯一の資格を持った国であるとも言えます。

非核三原則云々、はたまた核廃棄物処理等、深刻な問題が多々存在しますが、本稿はあくまで国家間のパワーバランスと戦争抑止の観点のみに焦点を合わせたものであることを念のため付記しておきます。

荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年9月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。