臨時国会の冒頭解散で、10月22日投票というスケジュールになりそうだ。野党は例によって「解散の大義名分がない」とか「北朝鮮の脅威が強まっているとき政治空白をつくるべきではない」などと批判しているが、私はそうは思わない。安倍首相の意図は政権の延命かもしれないが、政治は結果がすべてだ。
北朝鮮の脅威に対抗するもっとも有効な手段は、日米同盟の強化である。特に北の攻撃に対して米軍が反撃するとき、自衛隊がどこまで後方支援できるかが重要だ。今の安保法制では存立危機事態に限って武力行使が認められるが、それには複雑な条件を満たさなければならない。
こういう「歯止め」は、早ければ数日で勝負のつく現代のミサイル戦では無意味だ。北のミサイルが日本国内に着弾したとき、それを「実験」とみなすか「攻撃」とみなすかは容易ではない。攻撃とみなしたらただちに反撃しなければならないが、その前に国会を召集する余裕はない。安倍首相が判断して、国会が事後承認するしかない。
だから攻撃の瞬間に国会が開かれているかどうかは、大した問題ではない。自衛隊も米軍も24時間勤務で北の動きを監視しているので、首相がどこにいても情報は上がる。大事なのは米軍の情報だが、これは特定秘密保護法のおかげで漏洩しなくなり、かなり早くから官邸に届くようになった。
厄介なのは国会が「自衛隊の後方支援は憲法違反だ」と騒ぐことだ。1994年の寧辺空爆計画のときは、アメリカが海上封鎖したときの機雷除去に、内閣法制局が「戦闘に巻き込まれる可能性のある海域での米艦船に対する協力は違憲の疑いがある」と反対したので、自衛隊は何もできなかった。
このときは幸い軍事衝突が起こらなかったが、また後方支援を求められたら法制局が憲法判断するのだろうか。安倍首相がOKしたら、野党は国会で「戦争に巻き込まれた」と追及するのだろうか。北朝鮮のミサイルが飛んできても森友学園や加計学園で騒ぎ、「安保法制は憲法違反だ」などといっている野党こそ、国家の存立を脅かす「政治空白」をつくっているのだ。
日本が攻撃されるとき「アメリカの戦争に巻き込まれる」ことを心配するのは本末転倒だ。むしろ日本の戦争にアメリカを巻き込めるかどうかが重要で、そのためには安保法制を改正してフルスペックの集団的自衛権を認める必要がある。安倍首相が「日米同盟の強化」を争点にして解散すれば、今より圧勝する可能性もある。