【映画評】アウトレイジ 最終章

渡 まち子

関東の山王会と関西の花菱会の間で起きた熾烈な権力闘争の後、韓国に渡った元大友組組長・大友は、日韓の裏社会を牛耳る実力者の張会長のもとに身を寄せていた。ある時、大友が仕切る済州島の歓楽街で、韓国に出張中の花菱会の幹部の花田が問題を起こし、張会長の部下が殺害される事件が発生。これに怒りが収まらない大友は、手下を連れて日本に戻るが、この事件はやがて花菱会内部の権力争いと、さらには張グループとの抗争に発展していく…。

裏社会の男たちが繰り広げる極悪非道の権力闘争を描いて大ヒットを飛ばした「アウトレイジ」シリーズの完結編「アウトレイジ 最終章」。第1作では、関東の巨大暴力団組織・山王会の権力闘争を、第2作では、関東の山王会と関西の花菱会の熾烈な抗争と裏で手を回す警察組織の陰謀を描いた。北野作品初のシリーズものの完結編である本作は、どこか日本映画の伝統である任侠映画の良さを醸し出している。しぶとく生き延びた主人公・大友は、自分を守ってくれた張会長の恩義に報いるため、また、過去の抗争で殺された兄弟分・木村の仇を取るため、韓国から日本に戻り、自ら非情な抗争の渦中に飛び込んでいく。

裏切りや打算、因縁をひきずりつつ、エゴまるだしで暴走するこの群像劇は、とにかく不敵な面構えの俳優たちの顔が魅力だ。特に新キャラで、狂気と笑いが同居するピエール瀧がいい。劇中、西田敏行演じる花菱会の若頭・西野が、大友を「あんな古臭いヤクザ」と吐き捨てるように言う場面がある。つまり全員悪人のアウトレイジであっても、大友は結局、義理や恩義に囚われた過去の遺物で、そういう類の人間は消え去る運命にあるのだ。相変わらず凄惨で、それでいて笑える凝ったバイオレンス描写が満載だが、暴力の中に、古き良き任侠映画の終焉の時を見るようで、哀愁がひときわ際立つ最終章となった。だからだろうか、冒頭の済州島でのんびり釣りをしている大友の姿に、北野映画の大きな魅力である虚無感が色濃く漂っている。
【60点】
(原題「アウトレイジ 最終章」)
(日本/北野武監督/ビートたけし、西田敏行、大森南朋、他)
(クラシック度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年10月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。