消費税を隠して「見えない税」にするポピュリズム

総選挙が始まった。解散の直後は「政権交代」や「大連立」の可能性も取り沙汰されたが、焦点となった希望の党が失速して、安倍政権は安泰の見通しだ。希望の党の小池百合子代表が選挙直前に言い出した「消費税の増税凍結」は、あまりにも見えすいたポピュリズムだった。

彼女の戦略は、それなりに一貫している。税といえば消費税しか知らない情報弱者は、消費増税をいやがる。この点では安倍政権も同じで、増税分の一部を「使途変更」した。与野党そろってこれほど消費税を忌避するのは奇妙だが、消費税を上げなかったら国民負担は増えないのだろうか?

最大の負担は社会保険料

消費税は自民党のタブーである。大平内閣は「一般消費税の導入」を閣議決定したが総選挙で大敗した。中曽根内閣は「売上税」法案を国会に提出したが、廃案になった。それを「消費税」と改称した竹下内閣は法案を実現したが総辞職し、それを5%に引き上げた橋本内閣も倒れた。

消費税率を引き上げて選挙に勝ったのは第2次安倍内閣だけだが、それでも安倍首相は10%に引き上げることには慎重で、使途変更で実質的に増税を2兆円減額した。それは政治的には賢いマーケティングだが、国民負担の中で消費税の占める比率はそれほど大きくない。

サラリーマンの所得税は「天引き」されるが、その源泉徴収票をよく見ると、所得税より大きな額が書かれているはずだ。所得税率は年収300万円だと10%だが、健康保険料は11.5%、厚生年金保険料は18.3%である。

これは税とは書かれておらず、労使で折半ということになっているので負担感がないが、事業者負担分は企業にとっては法人税と同じで、それだけ労働者の可処分所得は低くなる。したがって社会保険料は約30%の国民負担で、これは支出に8%かかる消費税の約3倍だ。

これをマクロ経済的にみると、下の図のようになる。社会保険料の負担は66.3兆円だが、これでは社会保障支出118.3兆円をまかなえないので、その赤字45.4兆円を税で埋める。その税源の一部が消費税である。マクロ経済的にみると、社会保険料は消費税17.2兆円(2016年度実績)の3.8倍以上だ。

社会保障の負担と給付(2016年度予算ベース)、出所:内閣府

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