欧州にクリスマス・シーズンがやって来た。アルプスの小国オーストリアでもクリスマス市場は既にオープンしている。子供たちやキリスト教会関係者だけではない。大人たちもなぜか心をワクワクし仕事帰りに市場を訪れ、プンシュ(ワインやラム酒に砂糖やシナモンを混ぜて暖かくした飲み物)を傾ける、といった風景が見られる。
ところで、そのクリスマス市場がいま、危ないのだ。具体的にいえば、イスラム過激派テログループによって狙われているという情報が欧州の治安情報機関筋から流れている。
例えば、ドイツでクリスマス市場を狙ったテロ計画が発覚し、6人の容疑者が拘束されたばかりだ。ヘッセン州ラジオ放送が21日、捜査当局筋で報じたところによると、テロ対策特殊部隊が同日早朝、カッセル、ハノーバー、エッセン、ライプニッツでイスラム過激派テロリストの住処と思われる家屋に突入、6人のイスラム過激派を逮捕したという。彼らは20歳から28歳のシリア人でエッセン市のクリスマス市場襲撃を計画していたという。治安関係者は過激派の名前や身元を公表していない(後日、爆発物や銃などの物的証拠が見つからなかったことから、警察側は6人を釈放している)。
クリスマス市場を狙ったテロ襲撃事件は昨年12月19日、ドイツの首都ベルリンで発生している。ベルリン市中央部にある記念教会前のクリスマス市場で1台の大型トラックがライトを消して乱入し、市場にいた人々の中に突入し、12人が死亡、53人が重軽傷を負う事件が発生した。犯人はチュニジア人のアニス・アムリ容疑者(24)で昨年2月からベルリンに住んでいた。
アムリ容疑者は犯行直後、列車でオランダ経由でフランス東部リヨン市、シャンベリに入り、そこからローカル列車に乗り換え、イタリアのトリノに逃避行を続けたが、2人のイタリア警察に職務質問を受け、撃ちあいとなり、最後は射殺された。クリスマス市場テロ事件はドイツ国民に大きな衝撃を投じたことはまだ記憶に新しい。
ちなみに、クリスマス市場ではないが、スペインのバルセロナで今年8月17日、白いワゴン車が市中心部の観光客で賑わうランブラス通りを暴走し、少なくとも13人が死亡、100人以上が負傷するなど、OECD(経済協力開発機構)加盟国で少なくとも13件の車両を利用したテロ事件が起きている。そこでクリスマス市場の入り口に車両が侵入しないように、「アンチ・テロ壁」や「ボラード」(車止め、動力によって自動的に昇降するライジング・ボラードも含む)を設置する都市が増えてきた。
テロ専門家のニコラス・シュトクハマー氏はオーストリア日刊紙エスターライヒ(11月22日)でのインタビューで、「車両がクリスマス市場に突入することを防止する対策が取られてきているが、テロリストたちは爆弾を製造し、それをクリスマス市場で爆発させる計画を考え出しているから、要注意だ」と警告を発している。
同氏によれば、「ISはシリアやイラクで領土を失ったが、ジハード(聖戦)で訓練されたイスラム過激派が欧州に戻ってきている。彼らは欧州を次の戦地と考え、さまざまなテロ工作を計画している。彼らは聖戦で訓練されたプロのテロリストだ」という。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年11月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。