11月17日に軟禁中だった自宅を出て、840㎞の距離を車で走行してコロンビアに入り、18日にスペインに到着。この偉業を達成できたのも市民、軍隊、防衛隊、警察の協力があったからだとレデスマは語っている。
2014年に国家扇動の容疑で逮捕され4カ月収監された後、自宅軟禁となっていた。軟禁中も一時また収監されたが、自宅での軟禁が1000日続いていた。
レデスマは自宅で軟禁されているよりも、麻薬密売に汚染された独裁政権のせいで市民が悲惨な状態に置かれていることを世界に訴えたいと望んで外国に逃亡することを決心したという。毎日、警察が午前7時か8時にレデスマが自宅に居るという証拠写真を撮りに来る。逃亡することを決心した以後は、自宅を囲む軍人らの動きを監視することにしたという。それで17日に警察が写真を撮った後、すぐに待機していた車に乗って逃走した。4人のメンバーで、そのひとりは勇敢な女性だったそうだ。
「自宅を出た後、子供や女性がゴミ箱に食べ物をあさっている姿を目撃した時、私は涙が出て来るのを押さえることが出来なかった。それが世界で原油の埋蔵量が最も多い国で起きている。政府は国家の莫大な富を食い潰し、6000億ドル(67兆2000億円)以上を横領した」とレデスマはスペインに到着した後、ラホイ首相との会談の席で語っている。
コロンビアとの国境に跨っているシモン・ボリバル橋を渡る所まで到達するのに29カ所の検問所を通過したという。レデスマは独裁者マドゥロと戦って逮捕されたりしている人物だ。それがテレビ画面に映りベネズエラ全国で彼の顔は良く知られている。その彼が扮装していたとはいえ29カ所の検問所を問題なく通過出来たというのは本来は不可能なことであった。しかし、レデスマも認めているように、ある検問所では軍人が「貴方が誰だか知っていますよ」というサインをウインクで伝えた場面もあったという。そして、最後の国境の検問所を通過する時にすれ違った主婦が彼が誰だか分かった時に、その場にいた防衛隊員が「通過して、戦いを続けてください」と言ってくれたそうだ。その時、多くの軍人も腐敗し切ったマドゥロ政権に満足していないということなのだ、とレデスマは感じたそうだ。その時22時間の逃走が終わったのであった。
シモン・ボリバル橋を渡ってコロンビアに入って早速マドリードに在住しているコロンビアのアンドレス・パストゥラナ元大統領(1998-2002)にコンタクト。レデスマの逃亡にはパストゥラナは当初から良き理解者であり協力者であった。
パストゥラナは早速ホセ・マヌエル・サントス大統領の官邸に電話を入れたが、大統領が不在ということで、ルイス・カルロス・ビリェガス防衛相と接触し、大統領に全面的協力を要請。10分から15分経過して、同防衛相からパストゥラナに回答があり、レデスマが移動するのに必要なことは全て手配するという大統領からの伝言を伝えた。
サントス大統領の協力を得て、レデスマはマドリードに向かったのであった。マドリードのアドルフォ・スアレス・バラハス空港に到着すると、早速ラホイ首相から電話が入り、レデスマはその足でモンクロア首相官邸に向かった。
空港ではベネズエラを離れてマドリードに移住している彼の夫人と二人の娘と再会。彼の家族はレデスマが逃亡することは一切知らされていなかったという。コロンビアからマドリードに向かう時に初めて知らされたようだ。空港にはレデスマの逃亡に最も協力したパストゥラナ元大統領もいた。そして、スペインに在住しているベネズエラ人なども出迎えていた。
ラホイ首相との1時間半に亘る会談では、レデスマはまず自分のことよりも先にべネズエラ市民が空腹に苦しんでいる姿、そして医薬品の不足で死亡者が増加していることを伝えたという。30万人の子供が栄養失調にあることを伝えた時に、ラホイ首相がそれに強く心を痛めている様子をレデスマは感じたという。レデスマはラホイ首相が先導してヨーロッパで人道支援のチャンネルが開設されることを願い、それがベネズエラの教会によって運営されて必要なことが政治イデオロギーに関係なく満たされるようになることを願っていると述べた。また、政治犯とされて人たちに自由が取り戻せるようにヨーロッパから執拗にそれを訴えて欲しいということも願い出た。
レデスマはこれからポルトガル、フランス、ドイツ、英国、イタリアなどを訪問してベネズエラの現状を伝え、自由を取り戻すための活動をするとしている。また、米国では米州機構での会合にも参加する予定だとしている。更に、南米で12か国で構成されているリマグループの国々でもベネズエラの現状を訴える予定だという。
マドゥロ大統領はレデスマの逃亡に「ワインを飲むのにマドリード辺りに留まっていればよい」とテレビ画面の前で語った。
パストゥラナ元大統領は、レデスマの逃亡はマドゥロにとって衝撃となっているはずだとしている。「彼の逃亡もそのものもそうであるが、ベネズエラの軍部がすべてマドゥロに味方しているのではないということを如実に示したからだ」と語っている。
マドゥロは経済破綻も同然になっている現状のベネズエラで、何れ軍部によるクーデターがあると察しているようで、今回のレデスマの逃亡で軍部の末端まで中央からの統率が取れていないということを理解したようである。