コロンビアへのベネズエラ移民流入は日本も他人事ではない

コロンビアのホセ・マヌエル・サントス大統領(elvenezolano.newsより引用)

中南米における問題児ベネズエラが抱えている財政破綻そして食料や医療品の不足から、その影響を脆に受けているのがベネズエラと国境を分かつコロンビアとブラジルである。特に、コロンビアとベネズエラは19世紀初頭に存在した大コロンビア共和国を構成していた両国の繋がりは深い。大コロンビア共和国はシモン・ボリバルが提唱して現在のベネズエラ、コロンビア、エクアドル、パナマを主要領土として誕生した国家であった。

この歴史的な繋がりから、ベネズエラとコロンビアは背と腹の関係にある。1970年代にはコロンビアからベネズエラに17万人が移民したという。当時のベネズエラはカルロス・アンドゥレス・ペレス大統領の政権下で、豊富な原油の輸出で経済が潤っていた時代であった。その後1999年までに凡そ21万人がコロンビアから同じく移民している。

ところが、1999年にチャベスが政変を起こして大統領に就任してからベネズエラの崩壊が始まるのであった。チャベスの貧困者の救済策や民間企業の国営化など偏った政策を実施してのボリバル社会主義革命で経済は後退し、市民の安全は危険に晒され、挙句の果てには食料難、医薬品不足、ハイパーインフレといった事態に現在見舞われている。

その為、ベネズエラに移民していた多くのコロンビア人は母国に戻り、ベネズエラ人が今度はコロンビアに移民するという現象が起きている。

コロンビアは2000年から2015年まで平均してGDPで4%の成長を果たしてきた。昨年は世界的不況の影響で2%で留まった。コロンビアの経済が安定しているとはいっても、嘗てのベネズエラのようなオイルダラーで成長しているわけではない。そのような経済事情の中で、ベネズエラからの移民が急激に増えている。この1年半で、45万人がベネズエラからコロンビアに移民しているという。因みに、コロンビアの人口は4800万人。

食料難や医薬品不足という問題を抱えてベネズエラから多量に流入している移民の前に、コロンビア政府が「医療、教育、生産プロジェクトなどの実施に伴い、その追加費用の負担が多大なものになっている」と報道陣に語ったのはコロンビアのマリア・アンヘラ・オルギン外相である。これは同氏がティラーソン米国務長官と11月21日にワシントンで会談した直後の発言であった。

今回、オルギン外相が米国を訪問したのは半世紀続いたコロンビア革命軍(FARC)との和平交渉が成立し、その一方でベネズエラの危機を背後に抱えているコロンビアが米国からの協力を仰ぐ為の訪問であった。オバマ前大統領の政権まで、コロンビアは南米において最も信頼の厚い国として米国から評価されていた。しかし、トランプ大統領になってからは同大統領のラテンアメリカへの関心の薄さが問題になっている。これもコロンビアにとっては気になるところである。

コロンビアのホセ・マヌエル・サントス大統領がスペインのEFE通信の取材に答えたことがベネズエラの電子紙『elvenezolano.news』が取り上げた。その内容を以下に紹介しよう。

EFE通信の取材記者にサントス大統領は、「もし私に非常に気がかりな事は何かと尋ねられたら、その最悪はベネズエラのことだ」と指摘した。そして、大統領は「もしベネズエラが破滅するような事態になれば、これまで50万人の移民の流入で済むことではなく、それが数百万人になるであろう。そうなると深刻な問題になる」と述べた。

また、コロンビアはベネズエラから毎日より良い生活を求めて来る移民を受けていれていることを指摘した上で、大統領が「コロンビアの教育システムや保健衛生面において可成り劇的な負担になっている」と述べていることも同紙は報じた。そして大統領は「我々は寛大でありたい。国境を閉鎖することはしたくない。置かれている現状に我々が順応するようにしているのであるが、その現状が残念ながら次第に悪化している」と述べて、ベネズエラの事態の深刻さをEFE通信取材記者に語ったことを同紙は伝えた。

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北朝鮮から多数の難民が押し寄せる可能性が指摘される日本においても「未来」を暗示するものとして注目したい。