経営者や上司が厳守すべき“たったひとつの心得”

現役サラリーマンやサラリーマン経験を持つ多く人が同意してくれることがあります。

「ヒラ社員が一番気楽だ」ということです。

もちろん会社の年齢構成や会社の雰囲気によって異なるので、あくまで私の経験の範囲内ですが…。

極端なパワハラ上司がいる場合は別ですが、人間は「上の者から叱責される」より「下の者から侮蔑される」方が、遥かに精神的ダメージが大きいのが一般的です。

しかも、上の地位になると下の方が人数が多くなるので”多勢に無勢”です。孤独と相まって、辛い気持ちが一層身にしみます。

昨今は、部下が一致団結して上司を無視したり平然と悪口を言ったりする「逆パワハラ」も少なくないようです。

マキャベリの「君主論」によると、「下のものから憎悪されたり軽蔑されることは絶対に避けなければならない」という趣旨の記述が随所に見受けられます。

現代の経営者や上司も、部下からの憎悪や軽蔑は最も避けるべきことでしょう。

ここで愚かな管理職がやってしまいがちなことが、同列にある他の管理職の陰口を言いふらすことです。

現に、私が長銀高松支店在籍中は課長クラスが他の課長クラスの陰口ばかりを言い、野村投信在籍中は担当常務が他の常務の陰口ばかりを言っていました。

同列をこき下ろすことによって自分が浮き上がると思っているのかもしれませんが、いい歳をした常務が毎日のように陰口を言う姿は本当に見苦しいものでした。

では、どうすれば部下から憎悪や軽蔑を受けずに済むのでしょうか?

私自身がサラリーマンをやってきた経験と、弁護士として多くの企業を見てきた経験からすると、“責任を取ること”が部下からの憎悪や軽蔑を回避する最良の方法でだと考えています。

普段は部下に対して厳しすぎる上司であっても、何かトラブルが起きたときに「課長である私の責任です」と部長や役員に言える上司は尊敬されます。

逆に、普段は部下とフレンドリーに接しているのに、イザとなると部下に責任を押し付ける上司は軽蔑され憎悪されます。

経営者も同じです。

トラブルが起こったときに担当者を同席させて、「先生、こいつが馬鹿なことをやってしまいまして…」と責任を部下に丸投げする経営者が実にたくさんいました。

その度に後刻経営者に直接電話して「社長、外で部下のメンツを潰すようなことは止めてくださいね」と諭したこと数知れず。

経営者や上司は部下に対する”管理責任”を負っているのです。

従業員が他人に損害を及ぼした時、会社や雇い主が民法715条で使用者責任を負うのと同じで、上に立つ者は部下の失敗の責任も負わなければならないのです。

とはいえ「部下の功績は上司の功績。自分の失敗は部下の失敗」と言われるように、ついつい責任回避をしたくなるのが人間の性(さが)です。

少しずつでいいので、「自分が全面的に責任を負う」という習慣を身に着けていきましょう。

部下の見る目が変わるだけでなく、上からも「潔いヤツだ」と評価されるのではないでしょうか?

とはいえ、結果についての責任は(あなたの上司ではない)私は負いかねますので、くれぐれも自己責任でお願いします(笑)

荘司 雅彦
講談社
2006-08-08
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編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。