「外国人に喜ばれる日本のプレゼント」への誤解

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

憧れの海外生活や初めて外国人の友達が出来た。そんな時、私たち日本人はすぐに「相手に日本の良さを知ってもらいたい!喜んでもらいたい!」とサービス精神旺盛に観光地を紹介したり、グルメを教えたりあれこれと頑張るものです。そして日本の良さを伝える手段として、日本のお土産をプレゼントすることが結構多いのではないでしょうか。

外国人への贈り物について検索してみると、あちこちでおすすめのプレゼントとか、喜ばれた贈り物の記事がたくさん出てきます。100円ショップで売られている爪切りとか、しっかりした作り陶器まで、「これが外国人に喜ばれる」とばかりに様々なおすすめ情報が出てきました。悪い贈り物ではないと思うのですが、注意したいのは「オススメだと記事に書いてあったからこれを贈ろう!」と相手のことをよく知らないのに「外国人に人気の高いギフト」を選ぶと失敗する可能性があるということです。

お箸をプレゼントして喜ばれなかった体験

自分自身、過去に外国人へのプレゼントで失敗した経験があります。

私がアメリカの大学へ留学する時のことでした。「現地で仲良くなった人に日本のお土産を渡したい!」と思ってお箸を持っていったのです。というのも昔、ホームステイでうちに遊びに来たアメリカ人へお箸をプレゼントした時に「Oh! Wonderful!!」と喜ばれた事があり、「外国人に日本の箸は喜ばれるんだ!」と思って選びました。プレゼントをするお箸は漆塗りのいいものです。「日本の良さをぜひ伝えたい」と思い、現地で一番仲良くなった友人へプレゼントをしました。もうこの時は期待で胸がいっぱいになっていました。漆塗りの箸は深い和を感じられるから絶対に喜ばれるだろう、と。

しかし思い切ってプレゼントした時の反応はなんかいまいち…。「ああ、ありがとう」なんだか軽い感じです。喜ばれると思っていた私は「なんで喜んでもらえなかったんだろう」とガッカリしながら大学寮へ戻った記憶があります。

さて、この失敗談。あなたも相手のことをよく知らずに「とりあえずお箸は喜ばれるらしい」と考えてプレゼントすると同じ道を辿ることになるでしょう。なぜホームステイに来た外国人にはお箸が喜ばれたのに、留学先だと喜ばれなかったのか?それはホームステイに来た外国人は日本に興味があるから来ているわけで、そこへ日本の箸をプレゼントすると喜ばれたのでしょう。

しかし、考えてみるとアメリカの現地で生活する人は別に特別日本に興味があるわけでもありません。普段の生活ではお箸なんて使うことはないでしょう(事実、私は留学中一度もお箸を使いませんでした)。ですから同じアメリカ人に同じものを渡しても当然日本に興味がある人とない人とでは反応が違うわけです。

相手が価値を理解できるものでないと意味がない

「和風ならなんでもいい」「日本人にとってオシャレなものは外国人にもおすすめ」というのは「価値観の押し付け」です。日本の文化に別に興味がない、知識はそれほどなく理解できない状態で使い方やデザインセンスを理解できないものをプレゼントされても嬉しくないと思うんですよね。「ギフトは相手が価値を理解できるもの」でなければ喜ばれません。江戸時代の人に「これすごい便利だからどうぞ」とスマホをプレゼントしても「いや連絡を取り合う手段にはのろしを使うから要らないよ」とすぐ捨てられてしまうでしょう。極端な事を言うとそういうことです。

プレゼントを贈る前にまず、相手を知る

プレゼントを贈るのはまず、相手のことを理解してから、私がこのことをいうと「そんなの当たり前でしょ」と思うかもしれません。でもこの当たり前をギフトの世界ではなかなかできない人というのは本当に多いです。贈り物をするプレゼントを前に「どの商品にしようかな?」とうんうん頭を悩ませて吟味するより先に、相手の事を理解することが先だと思うのです。外国人へのプレゼントなのであれば日本に興味があるのか?日本文化への理解度レベルはどの程度なのか?どういったものが好みなのか?それによって喜ばれる贈り物は全然違ってきます。

「日本?確か中国の一部じゃなかったっけ?」という相手に和の陶器をプレゼントするのはやめ、キットカットとか、ポッキーといったお菓子をプレゼントした方が喜ばれるのではないでしょうか。おいしい食べ物なら日本の文化理解がなくても喜ばれるでしょう。「日本食大好き!」といっている相手にはお箸を、「日本の魅力はその繊細さ」という細やかな点に目がいきそうな相手には和紙の扇子などが良いのではないでしょうか。

まずは相手を理解することが喜ばれる贈り物への最初の一歩、というのは相手が日本人であっても、外国人であっても同じことだと思います。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。