民進党と希望の党の統一会派が破談になった。今後も、野党の間での比較一位を争いながら、結果としてさらなる細分化も発生していくのだろうか。
衆議院選挙前、小池百合子東京都都知事(当時希望の党代表)は、「安全保障、憲法観といった根幹部分の政策で一致している」ことが大事だ、と言った。そういう「根幹部分」の「一致」がないと、政党が、政党としてやっていけないのは、当然だろう。小池知事は正しかった。ただ、自分自身では、結果を出せなかった。
小池知事の言葉を真剣にとらえたのが、枝野幸男氏だった。小池知事の言葉にしたがって、枝野代表は、希望の党に参加せず、新しい党を作った。
それでは、立憲民主党は、どのような外交安全保障政策をとっているのか。小池知事とは一致しない考え方を持っているとして、それは何なのか。
枝野代表は、自民党が作った安保法制は立憲主義違反なので認められない、と主張する。他方で、「万が一の場合に備えて、自衛力は強化すべきであると考えています。米軍との関係も強化すべきであると。これも自民党と変わりはなく、大きな方向性としては共通です」と述べる(プレジデントオンライン「枝野幸男”菅官房長官を高く評価する理由”」より)。控えめに言って、わかりにくい。
枝野代表は、自分は自民党の宏池会か石橋湛山の流れだ、などと言うが、もう少し具体的な説明はないのだろうか。もう冷戦時代は終わっている、という認識はないのだろうか。
1月11日付の『読売新聞』で私のインタビュー記事を掲載していただいたが、そのときに取材していただいた記者の方に細かく説明したのは、次の点だった。私が以前から「立憲民主党が改憲のカギを握っている」と言っているのは、立民党を入れたコンセンサスを作るべきだ、と考えているからではない。野党第一党が、審議を拒否して運動に走ったり、国民投票の結果を否定したりしたら、まさに立憲主義の危機が起こる、と危惧しているからである。
・・・自分は〇〇と同じだ、自分は(自分が理解する)立憲主義を守る、自分は日米同盟を壊すとは言っていない・・・、そういった「立場」の説明は多々あるのだが、それは結局「ポジション・トーク」で、政策論にまでなっていないように思える。
前回の私のブログ記事に対して、民進党の小西ひろゆき参院議員がツイートし、私に対して「名誉棄損で法的措置をとることを検討する」と述べた。私の文章が大変に失礼なものであり、お気に召さなかったようである。小西議員は、私が参照した『BN政治』サイトは虚偽内容を載せているものだと述べてしまったため、『BN政治』に対して、謝罪することにまでなってしまった。私のブログに反応していただいたがゆえに、ややこしいことになり、誠に恐縮である。
ただ、もともとは、私が、集団的自衛権が違憲だとは言えない、と述べたことについて、小西議員が、篠田は「ホロコースト否定論者と同じ」などと描写したことが発端だった。この国では、少しでも憲法に関係したことを言うと、「ポジション・トーク」になり、ややこしいことになる。
まあとにかく、お前は黙っていろ、ということのようだ。非常に重苦しい閉塞感がある。
編集部より:このブログは篠田英朗・東京外国語大学教授の公式ブログ『「平和構築」を専門にする国際政治学者』2018年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。