平昌訪問で安倍首相の身辺警備の強化を

安倍晋三首相が来月9日開催の平昌冬季オリンピック大会(2月9日~25日)の開会式に参加を決定したというニュースが入ってきた。首相にとっても多分、熟慮した後の結論だろう。

▲平昌五輪スタジアム(平昌冬季五輪公式サイトから)

安倍首相はバルト3国など6カ国の公式訪問を無事終えて帰国した直後だ。当方は首相の健康状況を危惧している。欧州6カ国訪問最後のルーマニアでクラウス・ヨハニス大統領との記者会見での首相の表情をみて、「首相はかなり疲れている」と感じた。写真は撮影角度などで人の表情は変わるが、安倍首相の写真は本人の写真とは思えないほど、表情に影が見られたからだ。

そして、24日の官邸での写真を見た時も同じ印象を受けた。当方は医者ではないし、遠距離診断などできる立場ではないが、政治家、特に一国の代表である首相ともなれば、その責任とストレスは第3者では想像できないものがあるだろう。

さて、平昌五輪開会式に参加されるが、首相周辺の警備強化の必要を感じる。ソウルからの情報では、五輪競技場のチケットはまだ30%から50%程度しか埋まっていないという。韓国政府関係者は総動員で競技の観戦を呼び掛けている。開会式は、最高級の警備体制が敷かれるだろうし、VIP席は2重、3重の警備が敷かれると思うが、韓国入りから帰国までの首相一行の全ルートの再チェックが必要だろう。警備の手薄の個所がないか検証が必要だ。

マーク・リッパート駐韓米大使が2015年3月5日、襲撃されたことがあった。どの国にも警察当局の監視対象リストに入っていないローンウルフ(一匹狼)がいる。特に、韓国では反日傾向が見られるだけに、韓国側の警備体制の強化を願う次第だ。

北朝鮮は韓国側の対話に応じたが、その狙いは明らかだ、非核化などは北側の議題ではない。国際社会の制裁を受けている北朝鮮は韓国側からの様々な支援が喉から手が出る程欲しい。もう一つは日韓米の結束に打撃を与えることだ。
仮定だが、安倍首相ら日本代表団に何らかの不祥事が生じた場合を考えてほしい。日韓両国の関係は一層険悪化するだろう。マイク・ペンス副大統領を派遣する米国も静観できない。対北政策で日米韓の結束は崩れてしまう事態が考えられる。歴史はそのような不祥事がいつでも起こりうることを実証している。

問題はそのような危機的状況下で韓国の文在寅大統領が賢明な対応ができるかだ。国家の統治能力、危機管理はその国の最高指導者の責任だ。

平昌冬季五輪大会は本来、純粋なスポーツの祭典だが、そこに北側が参加を表明して以来、韓国内では平昌五輪ではなく、「平壌鮮五輪」となってしまったという声が聞かれる。韓国側が北の機嫌を損なわないことに専念するあまり、韓国国民の意向を忘れている。アイスホッケー女子の南北合同チームは政治的な決定だ。スポーツ競技の観点から言えば、五輪大会開催直前の南北合同チームは考えられない。韓国選手は南北対話を優先する文政権の“供え物”となったわけだ。

南北対話という美味しいエサを文大統領の目の前にちらつかせ、主導権を奪った金正恩氏の巧妙な作戦が成功したわけだ。非核化には応じない。しかし、韓国側の支援を受けると同時に、日米韓の結束を崩す、この3点を金正恩氏は計画通りに進めているのだ。

日韓両国は五輪開催を相互理解を深める機会として利用してほしい。安倍首相の五輪外交を期待したい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。