昨今、新聞紙上やネットニュース等で盛んに「働き方改革」という表現が用いられています。
政府の掲げるスローガンということで。
スローガンには、思っている以上の効果があります。
日銀が掲げる「2%の消費者物価上昇」というスローガンも、ぶれずに堅持し続けているからこそ、私たちは日銀の姿勢に変わりがないと安心(?)できるのです。
もし、識者たちが言うように、「2%の消費者物価上昇は不可能だ」として頻繁に目標数値を変えていたら、日銀総裁の発言のたびに株価や為替が揺れ動くのではないでしょうか?
実際に不可能な目標数値であっても、中央銀行の姿勢が一貫して変わらないというアナウンスメント効果があるのです。
ところで「働き方改革」というスローガンは意味が曖昧で、どう捉えればいいのか分かりません。
「無駄な残業を止め、有給休暇も取得してワークライフバランスをとろう」と解釈すべきなのか?
それとも、「副業もどんどん解禁して、働き方に多様性を持たせよう」と解釈すべきなのか?
個人的には、なんでもアリという印象を受けます。
「外縁が広がると内包が薄くなる」と言われるように、守備範囲が広くなればなるほど中身の濃さが薄れてしまうのです。同じ量の液体を狭い器の水に垂らすより、広い器の水に垂らした方が薄くなるのと同じです。
「働き方改革」は表現はとても曖昧な分、外縁が広がり過ぎています。「2%の消費者物価上昇」と大きく異なっていることは誰もが理解できるでしょう。
どのようにでも解釈できる玉虫色のスローガンは力強さが失われます。
「働き方改革」ももう少し細分化して外縁を狭くしてみてはいかがでしょう?
「1か月100時間残業は過労死ライン」は、数値も出ていてわかりやすいと思います。
多くの人たちの耳にタコができるくらい唱えれば、効果のあるスローガンになるでしょう。
「有給休暇取得率70%目標」という目標も、スローガンとしては分かりやすいと思います。
「そんなの無理だ」と言う人たちがいるのは「2%の消費者物価上昇」なんて無理だという人が多いのと同じです。
スローガンを掲げ続ければ、政府の姿勢が一貫不変であるということを示すことができます。
「働き方改革」の内容を細分化して数字を入れる。
これだけでも、かなり効果が期待できると思うのですが…いかがでしょう?
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。