大人の教養。「雨かんむり」で日本語力を上げる!

尾藤 克之

NHKニュース7(2017.12.12放送)より引用

今年の冬は天気の変化が激しい。靄(もや)が出るほど暖かい朝を迎えた日もあれば、霙(みぞれ)交じりから大雪になった日もある。この記事は、霙(みぞれ)交じりの寒い日に書いているが、あらためて“天気を司る”あめかんむりに風情を感じないだろうか。

今回は、田代幾美さん(会社員、ブロガー)と、伊東稔さん(漢検2級、整体師、カイロプラクター)に、漢字に関するエピソードを伺った。なお、伊東さんの著書には『ねこ背を治す教科書』(ソーテック社)がある。

日本人は漢字好きだった

12月に清水寺で公開される「今年の漢字」をご存知だろうか。これは、日本漢字能力検定協会(京都市東山区)に寄せられた応募を集計し、清水寺の貫主が1年の世相を表す「今年の漢字」として揮毫するものである。昨年は「北」が選ばれている(画像参照)。

さらに、日本漢字能力検定協会が実施する「漢検」は、3歳児から90歳代まで290万人が受験するなど、漢字ブームの火付け役にもなっている。最近では、語彙力や文章術に関するベストセラーが増えたこともありブームが持続している。

「漢和辞典を開いてみました。高校生以来、数10年ぶりです。しかし、手元には残念ながら昔の漢和辞典しかありません。ためしに図書館に行ってみると実にバラエティに富んだ辞書たちが鎮座していました。最近の辞書はソフトカバーのものもあり使い易く、図書館では自由にページのコピーができるのもありがたいです。」(田代さん)

「まず、あめかんむりの由来です。『上の一は天を表し、囲みは雲を表し、水(てんてん)がその間を落ちるさまに象る』とあります。つまり『象形文字』、漢字とはまさにその様子を文字というツールでとらえた、“アート”のようにも思えます。由来は中国なのだろうけど、日本の漢字は、さらに、シンボリックで見ていて楽しいです。」(同)

せっかくなら、楽しいをモノにしたいもの。漢字を覚えるにはどうしたらいいのだろうか。漢検2級の伊東さんは次のように解説する。

「とはいえ、画数が多くなってくると読めないし書けない。せっかく調べるのだから、手書きでも書けるようになりたい。クイズっぽく覚えてしまったほうが楽しくていいと思います。ちなみに、漢和辞典では、雨(あめ)、雲(くも)、霧(きり)・・・などのオーソドックスな字以外は、ほぼ音読みで解説されています」(伊東さん)

「訓読みは実は漢字そのものの読みではなく、文字変換の過程でMS-IMEなどがプログラミングしてくれているのかもしれませんね。しかし、読めない漢字が読めた瞬間、脳内に噴出するドーパミンは、まさに“青天の霹靂(へきれき)”です。」(同)

次の漢字が解けたら漢検1級レベル?

漢字好きの読者の皆さまに、田代さんと、伊東さんから例題がある。漢字の読み方と、漢字の意味が全問わかればかなりのセンスの持ち主だ。2人によれば漢検1級レベル(あくまでも勝手認定ですが)とのこと。ぜひ、チャレンジいただきたい。

雹(ハク)→ひょう。あられの大きなものを指す。散っているのを包むイメージ。
霈(ハイ)→大雨を指す。サンズイに市→街にいっぱい雨が降っている。
霍(カク)→はやい、すみやかを指す(鳥があわただしく飛ぶ声の形容)。
霓(ゲイ)→にじ。(鮮明なものを虹、薄い光のものを霓という)。
霎(ソウ、ショウ)→こさめ。しばし、しばらく「霎雨→ひとしきり降る雨」。
霑(テン)→うるおう、濡れる。→サンズイに占。なんか、したたるイメージ。
霙(エイ)→みぞれ。雨まじりの雪→雨の“英知”ってとこかな。
霤(リュウ)→雨だれ。→雨が留まるって感じ。
霪(イン)→ながあめ。雨が淫らな感じ?(笑)
霰(セン)→あられ。雨が散るイメージ。
霹(ヘキ)→かみなりの神。かみなりが落ちること。→辟易って感じかな?
霽(セイ)→はれる(晴)、雨、雲が止む→斉の字には、そろうという意がある。
霾(バイ)→大風が土砂を空に巻き上げて雨を降らせる→狸が暴れると怖い?(笑)
靄(アイ)→もや。「なに」「いつ」といった意。なんか詩的。
靂(レキ)→はげしい雷。→「歴」には次々と通り過ぎるの意がある。

結果は如何だろうか。このようにやってみると、漢字も手書きするのが楽しくなる。さて、筆者も1月に新しい本を上梓したので、関心のある方は手にとっていただきたい。漢字のお供に如何だろうか。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト