皆さまは人脈構築の活動をしているだろうか。数年前に異業種交流会がブームになった。より多くの参加者を集い、マッチング回数を増やすことで機会を増やすことが重視された。たしかに、人脈構築の手段として異業種交流会が一定の役割を果たしていることは理解できる。しかし評価に値しない交流会も少なくない。
交流会に著名人が参加していると、名刺交換に列をなしていることがある。会食中でも会場を走りまわり名刺収集に勤しむ人がいる。確かに、営業代理業や保険販売なら交換した名刺をすぐにデータベース化してアタックすれば、何らかの役に立つのかも知れない。しかし、本来の人脈とは人に魅力が無ければ集まるものではない。
また、主催者の「ピンはね臭」が漂っている交流会も存在する。通常、主催者は損をしないことが前提のうえで交流会を開催している。くわえて、参加者にも「売り込み臭」が漂っていたら最悪である。「交流会で客を増やすぜ」と鼻息が荒い人が多くなり、こうなると「仕事をもらいたい人」が必然と増えてくるため建設的な交流会にはなりにくい。
今回は、『シナジー人脈術~最小限の力で最大限の成果を生み出すたった1つの方法』(あさ出版)を紹介したい。著者は、コンサルタントの金川顕教さん。ビジネスの最強の武器は、人脈であること。知り合いの数ではなく、誰と組むかが大切であるとしている。
人脈でシナジーを起こすことが大切
諸説あるが、人生80年として、人が生涯に出会う人の数は膨大になる。学校で知り合う人や職場で知り合う人も相当な数になる。なんらかの接点を持っただけの人、単なる知人もいれば、友人、親友もいる。
「人との出会いは量ではなく、質です。成功している人の多くは、『どんな人』と縁をつなぐかを重視しています。そして、一緒の時間を過ごす人を抑えていて、お互いを高め合っています。会社員の頃、仕事柄、大企業を経営するような成功者と会う機会が多く、様々なことを学びました。そこには共通した傾向がありました。」(金川さん)
「成功する人は必ずといっていいほど意識的に多くの人とつながり、名刺もたくさん集め、意識的に人脈づくりを行っているということです。」(同)
筆者も仕事柄、紹介を依頼されることがある。しかし相手との信頼関係が構築できていない場合、紹介が難しい。このような場合、デキル人はメリットを提示してくる。人間関係は「クレクレタコラ」では成立しないことを知っているのである。
「人脈が大切な理由は、優れた人から『学ぶ』ことが成功への近道となるからです。人は学ぶことで成長します。学びの方法としては、本や動画などの『モノ』から間接的に知識を学ぶか、知りたい分野のスペシャリストや『ヒト』と会って直接学ぶかです。インパクトが大きいのは『ヒト』から直接学ぶほうです。」(金川さん)
「これまでの人生を思い出してみてください。マニュアルや本から学んだ知識よりも、友人や仕事の関係者とのやり取り、上司と部下の関係性の中などで学んだ知識のほうがはっきりと記憶に刻まれているのではないでしょうか。」(同)
これは社内を見渡せばよくわかる。「○○さん、上司が変わってから仕事で結果を出すようになったね」みたいな話を聞いたことはないだろうか。これが、本書のテーマ「シナジー人脈」に通じるものになる。金川さんは、いい人と出会ったことで大きな変化、つまりシナジーが発生すると解説しているのである。
自分を成長させてくれる相手とは
人脈構築の目的をひと言で説明するなら、自分にメリットを提供してくれる人と知り合うことになるだろう。しかし、口をぽかんと開けていてもなんのシナジーも生まれない。
「優れた人と出会ったら、その人自身になることはできなくても、今の自分と相手の足りないものをどんどん埋めていくことができるはずです。これは、ゼロからイチを生み出すよりもはるかに簡単です。今の自分の人脈は、将来の自分像を映す鏡といえるのです。『人脈術』というと、たくさんの知り合いをつくるイメージがあります。」(金川さん)
「大切なのは、相手とじっくり向き合う時間をとることです。また、つながる相手は、誰でもいいわけではありません。互いが連携したり協働したりすることでいい方向に向かう。つまり、個々で活動するよりも相乗効果やシナジーによって大きな成果を上げることができる人、その人こそが、あなたが一緒にいるべき相手です。」(同)
言い換えれば、シナジーが生まれる可能性がないと時間はもったいないということになる。組む人を変えれば仕事、人生はシナジーで変化することを本書では示唆している。さて、筆者も先日新刊を出版したので関心のある方は手にとっていただきたい。ビジネス文書が上手くなるかも知れない。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)
尾藤克之
コラムニスト