来月にも提出されると言われているIR実施法ですが、最大の懸念事項である、ギャンブル依存症に対する、対策案があまりにお粗末で、心底落胆しています。
小出しにだされているので、全容は分かりませんが、
先週出された案が、入場制限が週3回 月10回までというものでした。
いやいやいやいや、これ全く対策でもなんでもないでしょう・・・
週末しかやっていない中央競馬だって依存症になるんですよ。
まさかこれが「万全を尽くす!」と言っていた依存症対策じゃないでしょうね?
と思っていたら、本日新たな対策が打ち出されました。
それがこれ。
カジノ入場料2000円案 自民党会合で賛否両論(NHKニュース)
つまり、入場料を2000円と週3回もしくは月10回までというプランが、ギャンブル依存症対策となる!と、政府は真面目に考えたって訳ですよね。
でも、私が一番問題だと思うのは、
1回当たり2000円の入場料を徴収するほか、IRの事業者から、カジノの収益の一部を納付金として国が徴収し、国と地元の都道府県で折半し、観光や福祉など公益目的の事業に活用する
としていることです。
つまり、ここでまた既得権を得る方々がいらっしゃるわけですよね。
がっつりと。
そして、例えば売り上げが下がったら、この既得権を得た人達のために、どんどん規制を緩めていく・・・と。それが今までの日本のギャンブル産業の有り方ですよね。
しかも、恐ろしいことに、これら納付金からまわす公益目的事業の中に、「ギャンブル依存症対策費」が明記されていない!
いや、ギャンブル依存症対策をしっかりやる!というなら、そこでしょうよ、はっきりさせなくちゃいけないのは。
現在「しっかりやる!」と言って打ちだされてきているギャンブル依存症対策は、「ギャンブル依存症対策基本法」「IR実施法」含めて、これら産業側にダメージのない、やわらかなアリバイ作りのような入場規制のほか、相談窓口の設置、ポスター作りなど、正直たいした対策など何一つ出されていません。
そして、昨年のIR推進法が通過して以来、我々当事者、家族の民間団体は、ヒアリングすら呼ばれていないのです。
だってそのはず「特定複合観光施設区域整備推進本部」は、その名の通り、ばりっばりのIR推進派の先生方しか入っておらず、ギャンブル依存症の観点の理解者などいないのですから。
「民間団体支援の強化!」も、「やります、やります、やりますとも!」と、推進派の先生方が、口を揃えておっしゃって下さった割には、厚労省の今年の予算は、アルコール、薬物、ギャンブルあわせて各自治体に3億円。47都道府県でギャンブル依存症の民間団体に対する支援はおよそ1億円。つまり単純に1県で割ったら200万円ですけれども、それすら昨年に引き続き、早々に各都道府県で「ギャンブル依存症の予算はつけません!」ときっぱりお断りされています。
さらに、自治体があまりに予算をつけてくれないので、我々がメンバー総動員で全都道府県に電話調査をし、その結果を死ぬっ程、議員の先生方にロビー活動し、国会で度々質問をして頂くようにお願いにあがり、必死に活動した結果、我々のような全国規模で活動する民間団体に予算をつけてくれたのですが、それがアルコール・薬物・ギャンブルあわせて1800万円ですよ。
それ3つの依存症で割ったら、たったの600万円。
しかも、その予算がつくとなったら、様々な団体が参入してくるわけですよ。
これで一体何ができるというのでしょうか?
私たちは、日々東奔西走して、自殺の動画を送りつけてくる人を救出にすっ飛んでいったり、自宅で家族に刃物を突き付けてくる人を説得して、病院に繋いだり、生活保護費を使い果たした人を施設に繋ぐための、移動費や食費をカンパしたり、そういう行政や医療がどうにもしてくれない、支援からこぼれおちた人達をこっちが身銭を切って支援しています。
それが日本の現実なのです。
それらの話しを、これほど何度も繰り返しているのに、政府は真摯に聞こうとせず、打ちだしてくる対策が、2000円の入場料と、週3回 月10回の入場規制……
これで本当に良いと思われているのでしょうか?
推進派の皆さん、
まずは、ギャンブル依存症による現状の調査、そして社会コストを出してください。
そして現実を把握し、それに見合った予防教育、介入、治療、研究、社会復帰、啓発、人材育成などの対策を打ち出し、行政、医療、民間団体、それぞれに必要な規模感にあった予算を捻出して下さい。
それをやらずに、小手先の対策とも呼べない、目くらましのプランで誤魔化していくのは日本のためになりません。ギャンブルで、大切な日本の国力をこれ以上奪ってはならない!と思っています。
編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年2月22日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。