お金がなくなって真っ先に食費を削るから余計に貧しくなる

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

東洋経済オンラインに興味深い記事が掲載されていました。「46歳貧困男性が自己責任論を受け入れるワケ」というタイトルで、年収は約240万円で貯金がゼロという男性が紹介されており、身を乗り出すように一気に読み終えてしまいました。そして読了後に感じたのは「お金がなくなると真っ先に食費を削ってしまうから、ますます貧しくなってしまう」というものです。

最初にお話をしておくと、現在の私は貧困生活を送っていません。ですが学生時代や、社会人になりたての頃は一日数百円の食事で生活をしていた時代がありました。今回はその時の経験を踏まえて思ったことをお話したいと思います。

貧困化するとまず食事が貧しくなる

私が子供の頃、両親は離婚して母子家庭で育ちました。実家は貧しく、大学を卒業して社会人になった後も働き初めた当初はとにかくお金がありませんでした。

大学受験の合格祝いは100円の回転寿司と、100円のケーキ2つ。そんな私がアメリカの大学に留学出来たのはお金があったからではなく、成績上位者になることができたので学費、生活費など一切の費用を免除してもらえたからです(今でも心の底から感謝しています)。大学を卒業し、アルバイトで貯めた数十万円を持って上京した時は人生最大の極貧生活でした。

上京して最初に入居したのは南千住・ドヤ街の宿泊施設でした。少しお金が溜まって引っ越しをした先は、足立区・北綾瀬で加平インター沿いのアパートです。24時間高速道路を走る車の音がうるさく、排気ガスで窓を開けることも出来ませんでした(エアコンはもちろんありません)。家賃は一緒に住んでいた弟と割り勘で一人2万5000円です。食費は1ヶ月1万円以下で自動車はおろか、自転車も持っていません。はたから見るとお金がない底辺かもしれませんが、まったく不健康でも不幸を感じていたわけでもありません。その理由の一つに食事が充実していたことで、心の充足があったからだと考えます(詳しくは後述)。

しかし、今回読んだ記事をはじめ、貧困ドキュメンタリーなどではほとんどが食のインフラがとても貧弱です。貧困生活をすると、大抵の人が真っ先に削ろうとするのが食事です。そう、貧困化すると最初に食が貧しくなるのです。

食費を1日300円に抑えることを目標にしていた。そのために、近所の大型スーパーの特売日に、大量の冷凍食品と、2.7リットルのペットボトルに入った1900円ほどのプライベートブランドの格安ウイスキーを買う。昼は「白米8割、残りの2割に冷凍食品のミニハンバーグとかカニクリームコロッケを詰めた弁当」を持参し、夜は夕食代わりにウイスキーを飲んで眠る。「お酒が強いわけではないので、(ウイスキーを)飲む量はそれほど多くありません。だから、1本で2カ月近くもつ。寝つきもよくなりますし、食費の節約にもなるんですよ」。

引用元:「46歳貧困男性が自己責任論を受け入れるワケ」

とあり、お世辞にも健康的で好ましい食事をしているとはいえません。食費を一日300円以内ということですから、1ヶ月で1万円以内ということでしょうか。しかし、上京当時の私も食費は1万円以内でしたので、あまり違いがありません。違いがあるとすれば食べている「もの」です。

1ヶ月1万円以内で食インフラの充実化は可能

上京当初に私がとっていた食事は次のようなものです。

・玄米
・大豆
・ゴマ
・ミューズリー
・バナナ
・納豆
・刻みネギ
・卵
・キムチ
・牛乳
・ミニトマト

まず、玄米と大豆とゴマを一緒に圧力鍋で炊いていました。玄米は栄養価が高く、特に水につけて発芽させて炊くことで完全食品と呼ばれるほど爆発的に栄養価が高まります。タンパク質は大豆があるので問題ありません。そして一見すると鳥の餌にしか見えないミューズリーですが、これにドライフルーツとナッツ、バナナを買って混ぜて、ヨーグルトメーカーを使って牛乳をヨーグルトにしてかけて食べれば栄養満点のおやつの出来上がりです。ミューズリーは保存性、モバイル性に優れており、お腹が空いたら口に放り込むだけという手軽さがあります。一時期、会社の昼食にミューズリーを食べていた時がありました。周囲からは笑われたものですが、おいしくて栄養満点なので気になりません。

刻みネギ、納豆、卵、キムチを混ぜてビタミンをとります。発酵食品同士であるキムチと納豆を混ぜると、相乗効果が現れて単体で食べるのと比較にならない最強の栄養食品の出来上がりです。ミニトマトは狭いアパートでも育てることができるので、食を豊かにしてくれます。

私は上記の食生活を1年以上送っていましたが、2回受けた健康診断は全ての項目でAでした。しかも食事はおいしいので、途中で嫌気がさすこともありません。むしろ、たまに食べるラーメンや牛丼の調味料の濃さなどに「ウッ」と来るほど味覚が敏感になっていたほどです。

1ヶ月1万円以内の食事でもお腹いっぱい食べられて、大きく不足する栄養もありません。上記のメニューは万人には受けないかもしれませんが、私は特殊体質だったのかとてもおいしく感じて、味覚も敏感になれてよかったと思っています。

経済的に困窮した時ほど食のインフラを整えるべき

住んでいたのは東京のボロアパートでしたが、近くに安いスーパーが多く、図書館もたくさんあったので大金を使わずとも充実した生活を送ることが出来ていました。家賃は2万5000円で食費も1万円程度でしたので一ヶ月の生活費は4-5万円程度、年間でせいぜい60万円です。休みの日は資格試験の勉強や、読書で時間を過ごしていたので、「欲しいものが買えない」「自分は貧困層なのだ」という感覚は一切ありませんでした。今振り返っても創意工夫の毎日であれはあれで結構楽しかったのを覚えています。今は起業して当時より経済的に豊かになりましたが、時々昔の素朴な食事が食べたくなってしまいます。

食事は何を置いても一番に優先するべき重要なもので、食事がコケると他の全てがうまくいきません。人格者で仕事ができる人ほど健康に気を配っている、という話を聞いたことがありませんか?お金を持っていて仕事で大きな成果を上げている人は「健康は投資するべき資産」と考えているのです。日々、満足のいく食事をすることで、仕事や家庭などにも心を配ることができ、好循環を作り出すことができるのではないでしょうか。

生活に困るほどお金がない人ほど、真っ先に食事がおざなりになりがちです。ですが、私からすれば「貧しくなるほど、まずは食事の充実さを確保するべき」と考えます。栄養が不足してしまうと、健全な精神や前向きな発想が出てこず、いい仕事もできません。心と体の健康はつながっているので、困った時にこそ栄養をしっかりとるようにしましょう!

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。