サッカー界で世界最高の富豪がスペインリーグでプレー

白石 和幸

elperiodico.comより引用

スペイン・サッカー1部リーグのヘタフェCF(Getafa CF)に先月マチュー・フラミニ(Mathieu Flamini)選手(33歳)が入部した。

ヘタフェは1923年に創設されたマドリード州のチームで、1部リーグでのプレーは2004/2005年シーズンから始めて12年間継続、その後2部に降格したが、現在また1部に復帰している。

マチュー・フラミニ選手はオリンピック・マルセーユ(2003/2004年)に所属した後、アーセナル、ミラン、そしてまたアーセナル、クリスタル・パレスと14年間プレーし、443試合に出場、21得点、フランス代表に3度選ばれた。ポジションはミッドフィルター。この経歴を見る限り、特に際立った選手でもない。

ところが、彼のヘタフェへの入団時にスペインのメディアで話題になった。スペインのメディアがそれを取り上げた。なぜ?

実はフラミニが2008年に創設した企業GF Biomechemicals(BFB)が現在300億ユーロ(4兆500億円)という資産評価されているからである。そのことから、報道メディアは一斉に、サッカー界で世界最高の富豪がヘタフェに入団した、といった内容で報道した。

彼の入団発表の記者会見の席でも、記者から「(ヘタフェの会長)アンヘル・トッレスからクラブに投資の誘いはなかったか?」と冗談半分に尋ねられたほどであった。その質問に対してフラミニは「このクラブに新たに投資家は必要ないと思う。会長は私に投資して欲しいとは言わなかった」「会長は職務に情熱を燃やしていて、選手と監督の傍にいつもいてくれている。みんながクラブを好きになれば、チームも際立ってくるようになる」と顔に微笑みを浮かべながら答えたという。

ヘタフェを選んだ理由としてフラミニは次のように語っている。「私の年齢になるとクラブが描いているプロジェクトを気に入ることが重要だ。昨年12月から(テストで)ヘタフェにいたが、最初の予感として私はこのチームが気に入ることを感じていた」「スペインでプレーしたことがないので、それを経験したいと思った」「ヘタフェが描いているプロジェクトに興味が湧いている」と答えた。

現在、世界のサッカークラブの資産評価で上位3クラブはマンチェスター・ユナイテッドの30億4500万ユーロ(4110億円)を筆頭に、レアル・マドリード29億7600万ユーロ(4020億円)、バルセロナ27億6500万ユーロ(3730億円)となっている。この3つのクラブの資産を合わせてもフラミニの企業のそれに比べ遥かに及ばない。

バスク紙『Noticias de Gipuzkoa』は、世界の主要な32のサッカークラブを一挙に買い占めることのできるサッカー選手がいる、といってフラミニ選手を紹介した。

また、同紙はスペイン1部リーグの選手の年俸は15万5000ユーロ(2100万円)以上からだが、フラミニにとってそれはパン屑みたいなものだと揶揄した。

フラミニが2008年に企業GF Biomechemicals(GFB)をイタリア人パスクアレ・グラナテと設立したのは、石油の燃焼によってもたらされる環境汚染を少なくして、しかもコストをより安くする代替物質を生み出すことを具現化したいという望みからであった。フラミニはそのプロジェクトを実現させるための不安が余りにも強く、リスクも大きいので家族には内緒にしていたそうだ。密かに始めた事業のスタートから8年が経過した時点で家族にもそれを伝え、公にしたそうだ。リスクは非常に高いものだったが、相当の資金を投資したという。それは彼がサッカーで稼いだお金を充てることで可能であった。

そして起業から10年が経過した頃には、会社の資産は300億ユーロにまで評価されるようになったという次第だ。

では何を生産しているのかというと、レブリン酸である。

レブリン酸について筆者は専門家ではないのでウィキペディアとある企業案内を参考にさせてもらった。それによると、用途として合成ゴムやプレスチックの原料になり、医薬品の中間体、香料、ポリマー添加剤、化粧品原料など有機合成物の原料に使用されるとある。

筆者は化学の分野は素人であるが、レブリン酸の需要は環境保護の重要性がこれからも社会で問われるようになると、さらに拡大して行くことは確かである。

GFBはイタリアのナポリから車で30分のカセルタに研究所を構え、ミランとオランダのヘレーンにオフィスがある。従業員は480名。

最近、米国ミズリー州にあるレブリン酸の生産メーカーとして米国で最大規模のSegetisを買収して、バイオプラスチックのテクノロジーの拡大を図るとしている。

サッカー界を引退してもフラミニは企業経営者としてのポストが約束されている。しかし、今の彼は「サッカーを第一に優先することだ」と、1年半前に語っている。そして、「多くのサッカー選手と同様に、サッカー以外にも関心をもっていることがある。私の場合はバイオエコノミーだ」と付け加えたという。