おとといのアゴラの記事の私の推測は外れたようだ。昨夜からの報道によると、財務省は12日にも「書き換え」の事実を認めるという。まだ全容は明らかになっていないが、私が間違えた部分を取り急ぎ訂正しておく。
各社の報道はまちまちだが、売買契約の「決裁文書」に複数バージョンが存在することは確実だ。これ自体は私の予想どおりだが、NHKニュースによると「国会に提出された決裁文書とは一部内容が異なる文書を検察側が保管している」という。
だとすると、私が「検察に任意提出したバージョンは国会に開示したのと同じだろう」と書いたのは誤りだった。検察と違うバージョンを国会に出したら、それを見た検察がすぐ気づいて公文書偽造の動かぬ証拠になる。まさか近畿財務局がそんな単純な偽造をするはずがない――というのが私の常識的な見立てだったが、常識外のことが起こったようだ。
朝日新聞の情報源は、検察だと思われる。第一報の「契約当時の文書」を「検察に任意提出された文書」と読み替え、「複数の関係者」を「大阪地検特捜部」と読み替えると、この記事は理解できる。朝日が「原本」の写真を出せないのに「確認」したと主張する理由もわかる。この「原本」は今後も出てこないだろう。国家公務員法違反(捜査情報の漏洩)の証拠になるからだ。
「書き換え」が決裁前か後かは不明だが、検察に出したのが旧バージョン、国会に出したのが新バージョンだと思われる。「書き換え」が2016年6月の売買契約のときだったら、小さな案件のテクニカルな修正だが、去年2月に国会に出すときだったら「改竄」といわれてもしょうがない。後者なら麻生財務相の進退問題に発展する可能性もあるが、安倍首相まで行く話ではないだろう。
奇妙なのは去年2月に国会に新バージョンを出したあと、4月以降に検察に旧バージョンを出したことだ。ありうる推測としては「決裁文書を改竄した国会担当者と、検察に文書を任意提出した担当者が別の人物で、改竄の口裏合わせが足りなかった」とも考えられる。
もともと森友問題は朝日だけが騒いだケチなサツネタだが、政権の対応は拙劣だった。事態はニクソン大統領が些細な盗聴事件をもみ消そうとして大スキャンダルに発展し、政権が倒れたウォーターゲート事件に似てきた。正式発表は週明けを待ちたい。
追記:月曜朝の日経電子版によると、「財務省や近畿財務局が途中で書き換えた文書は14あり、森友問題が浮上した昨年2月以降に書き換えられた文書も含まれていた」という。佐川元国税庁長官の「関与」も判明したとのことなので、財務相の責任はまぬがれないだろう。