勉強嫌いの子どものお母さんたちに共通することがある。それは、子どもの遊びを制限し過ぎること。受験を控えたお母さんたちによく見られる傾向だ。親として当たり前の行動かもしれないが、主体性のある勉強する子どもを育てるには、必要不可欠なことがある。本記事は「主体性」をテーマに構成していきたい。
今回は、『勉強しなさいと言わずに成績が上がる!すごい学習メソッド』(永岡書店)を紹介したい。著者は、藤野雄太さん。ナディア・コマネチなどを育てた「伝説の体操コーチ」、カロリー夫妻の日本人唯一の弟子である故・野村るり子氏に師事。子どもの才能を開花させる指導法を塾経営者や母親に伝えるための個別指導塾を運営している。
子どもが主体的に勉強するようになる
米国デューク大学の行動経済学、ダン・アリエリー教授(Dan Ariely)は「人間はどれくらい嘘つきになれるのか」という実験をおこなったことがある。
「4万人の大学生を対象に、20問の計算問題を5分で解かせた後、学生に『自己採点』をしてもらって答案を提出。満点ならば6ドルをもらえるというものです。採点した答案は、自分でシュレッダーで粉砕します。嘘をつこうと思えば満点申告をして6ドルがもらえます。ただし、このシュレッダーにはある仕掛けがしてあります。」(藤野さん)
「粉々にされているのは答案の両端のみで、解答部分は粉々にされていません。さて、4万人のうち、どれくらいの学生が嘘をつくと思いますか?答えは、約70%。欧州、アメリカ、中東、アジア、どのエリアでも70 %になったそうです。さらに、大学生の成績の優劣にも関係なく、どのレベルの大学でも不正をしたのは70 %になりました。」(同)
しかし、同じ実験前に、ある作業を施すと全く異なる結果が得られた。「私は大学の倫理規定に従います」という文書にサインをさせてから計算を解かせたのである。
「UCLA大学では、旧約聖書の十戒を書いてもらい、それから計算を解かせました。すると、どうなると思いますか?なんと、不正はゼロになるのです。この実験は2つのことを意味しています。1つ目は、不正は人間の本質であるということです。」(藤野さん)
「ダン・アリエリー教授は、だからこそ、人間は不正から身を守る方法をしる必要があると言います。2つ目は、人間には誰にでも倫理規定が存在しているということ。聖書を書いたり倫理規定にサインするだけで、不正がゼロになるのです。」(同)
同じことが子どもの勉強にも当てはまるそうだ。個別指導塾の授業では、ときどき疲れて寝てしまう生徒がいる。そういうときには次のような対応が効果的とのこと。
「このように声をかけます。『○○は、今日は疲れているんだよな。塾に来ただけでえらい!無理しないで、寝てていいよ。眠くなくなったら先生に教えてくれ!』。最初は寝ているのですが、子ども自身がずっと寝続けることに耐えられなくなり、自分からムクっと起き出して勉強をし始めます。」(藤野さん)
「宿題に関しても同じです。『宿題の量は自分で決めていいからな。0ページ、2ページ、4ページ、好きなのを自分で選んで』。そうすると、子どもは最初は喜んで0ページを選択します。しかし、1か月も続けると、子どもは0ページを選ぶことに耐えられなくなり、『先生、宿題やらなくていいの!?』と声をかけてきます。」(同)
子どものなかの倫理規定を目覚めさせる
藤野さんは、生まれつき学ぶことや勉強が嫌いな子どもなどいないと主張する。親や先生に強制されたり、わからないところがあるから嫌いになっているだけであると。
「実際に私が経営している個別指導塾では、定期テストの2週間前には、子どもたちは自分から毎日勉強を始めます。中学生はテスト前の2週間は毎日塾に来て、楽しそうに勉強をします。この光景が噂になり、全国から150名以上の塾経営者が見学に来られました。私は何も特別なことはしていません。」(藤野さん)
「子どものなかに眠っている倫理規定を目覚めさせているだけです。そうすれば、誰でも自分から勉強をするようになるのです。」(同)
この機会に、親がしっておくべき子どもの接し方を覚えておきたい。倫理規定を目覚めさせれば、子どもは自ら勉強するのである。さて、筆者も、新刊を上梓したので関心のある方は手にとってもらいたい。子どもに勉強を教える際、役立つかもしれない。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)
尾藤克之
コラムニスト