お金をかけている人ほど英語学習が成功しない本当の理由

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

今回のこのタイトル、「どうせ煽りタイトルでPV稼ぎでしょ!?」と思ったかもしれませんが、そうではありません。私は心の底から「お金をほとんどかけない勉強法こそ、真の英語力が身に付く」と思っています。日本は英語学習においてとても恵まれた環境にあります。英語の学習法の正しいやり方を理解すれば、お金をかけずに実践的かつ、外資系企業で英語をバリバリ使って仕事をするレベルに到達することは、実は誰にでも可能なことです。

「英会話の練習をして英語力上達」は幻想

多くの人は「英会話」に憧れを持っていると思います。外国人と流暢に英会話をすることを想像すると、とてもカッコよく、ペラペラと話すことを夢見ている人も多いのではないでしょうか。そして義務教育や高校・大学でカリカリと読み書きの勉強をしてきた人ほど、「やっぱり英会話を練習しなければダメだ!」と一発奮起して英会話スクールに駆け込むケースも多いと思います。

しかし、英会話をひたすら練習して、英語力を身に付けるやり方は、実はものすごくお金も時間もかかる「非効率でコスト高」な上達法です。否、上達すればまだ救われますが、上達の手応えがなく、英会話を辞退してしまう人が世の中にはたくさんいます。私が昔、英会話スクールの体験レッスンに行った時のことです。生徒の一人に「英会話スクール歴20年」というおじさんがいました。20年間英会話スクールに通い続けているのですから、さぞやものすごく流暢な英会話なのかと思いきや…お世辞にも上手とは言えません。

しどろもどろのスピーキング力、自然な会話を振られても1回目ではまず聞き取れないリスニング力でした。これはその男性に英語の才能がなかったわけではなく、会話だけで高い英語力を付けよう、という誤った英語上達法にあると考えます。その男性が正しい英語力上達法をやっていたら、20年という膨大な時間をかけずともおそらく1-2年でメキメキ上達しただろうに…ともったいなく感じてしまうのです。

「そうはいっても日本人は、読み書きだけはしっかり何年もやっている。不足しているのは読み書きではなく、英会話なのでは?」と言い返したくなるかもしれませんが、読み書きの量が圧倒的に足りていません。日本人の英語力が最大限に高まるのは大学受験時期かと思いますが、その時期に英語のニュースや、英字新聞をスイスイ読める人はどれだけいるでしょうか?恐らく答えはNoだと思います。

根本的に足りないのは英会話力以前に、読み書きする力の方なのです。

まったく英語ができなかった私

私はTOEICで最高985点・英検1級を取得し、アメリカの大学で会計学を専攻し、複数の外資系企業で外国人と一緒に経理・財務・経営企画という仕事をしてきました。現在はフルーツギフトビジネスで起業し、英語サイトを立ち上げて運営をしています。とりあえず、英語を活用できるレベルには到達することができたと思います。

これは私が生まれつき英語の才能があったわけでも、元々得意だったわけでもありません。英語学習にお金をかけられなかったが故に、お金をかけずに英語力を身に付ける方法を取らざるを得なかった結果なのです。「そうは言っても英検1級を取ったり、アメリカの大学に行って学位を取得したのはセンスがあったからでしょ?」と思われたくないので、いかに私がダメダメだったかを話させてください。

私の義務教育時代はひどいもので、中学一年生で勉強に躓きました。中学を卒業する頃は、一般動詞とBe動詞という言葉の意味も分かりませんでした。高校は入学式の直後に先生にケンカを売って退学する生徒がいたようなド底辺工業高校、そこで行われていた英語の授業はせいぜい中学二年生レベルという目も当てられないものでした。それに加えて、私自身も英語についてはほぼ手付かずで、とうとう過去形もまともに理解できないまま高校を卒業することになりました。

そんな英語力0の私でも、流暢に英語を話す自分に強く憧れを持っていました。これは親の影響がとても大きく、「アメリカという国は世界の先端を走っている。日本という国に留まらず、世界を股にかけるような仕事をしなさい!」と聞かされてきたからだと思います。青春時代から勉強はしなかったものの、「いつか自分も国際人になりたい!」と憧れだけは持っていたのです。

100万円以上かかる語学留学は経済的に不可能、母子家庭育ちで、兄弟が4人もいて、月収15万前後の人間にはハードルが高すぎて手が出ませんでした。

英語力は読解を通じて身に付ける!

それでも当時の私は諦めませんでした。「英会話スクールがなかった時代でも英語力を身に付けた日本人はいたのだ。スクールや留学に頼らないで英語力を身に付ける方法は絶対にあるはずだ!」と思い、英語上達法について調べまわりました。図書館で英語学習法についての本は10数冊読んだでしょうか。Webでも膨大な英語学習法のサイトを読み漁りました。

最終的にたどり着いたのは「ひたすら英語の文章を読解する」というものです。「え?これだけ??」はい、これだけです!英語の文章を読むことは海外に行かなくてもできることです。「確かにこれならお金を使わずにできることだが…」と半信半疑ながら、私は中学生用の英語の長文読解からスタートしました。最初は一つのパラグラフに意味の分からない英単語が山ほど続き、文法の意味も分からず苦しんでいましたが、その都度、調べながら読むことを続けていると、次第に知らない英単語がなくなり、英文法の力が付いてスッと読めるようになっていったのです。「おお!!自分英語を読んでいるよ!!すげー!!!」と興奮したのは22歳の頃です。

中学レベルの英文読解ができるようになった後、その次に手を出したのは大学受験用の長文問題です。最初は苦戦しましたが、同じやり方で時間をかけて英単語や文法を理解していくことでどんどん正確に、早く読めるようになっていきました。リスニング力はNHKテキストを買ってラジオ英会話を録音してリスニング&スピーキングの練習です。ひたすら英文読解とNHKラジオだけしかやりませんでしたが、腕試しに受験した英検2級に1発合格、着実に英語力が付いてきたのを感じました。

その後は週刊STという優しい英字新聞を読み始め、レベル分けされているラダーシリーズの洋書に手を付けました。参考書は中古本やオークションで買い、英字新聞は図書館で読むことが出来たので本当にほとんどお金をかけませんでした。というか、お金がなさすぎてかけられなかったというのが正しい表現です。

英文読解の訓練だけで留学も仕事も突破できた

その後、外国語大学の短期大学部に入学しましたが、私は1ヶ月で大学を退学したくなりました。なぜなら「外国人とのグループ英会話ばっかりで時間がもったいない。これなら自分でやったほうが遥かに早く英語力が身に付くのに…。」ということに気づいてしまったからです。外国人教師との英会話がムダとは言いません。ですが、時間あたりの学習密度はあまりにも薄く、大学ではマンツーマンではなく、大きな教室に数十人の生徒を集めてみんなと一緒にやるスタイルでしたから、時間のムダとしか思えませんでした。外大生として大学生活を送ったわけですが、私は授業外でひたすら英字新聞や洋書を読んでいました。実質、英語力はほぼ独学で身に付けました。

その後、私はシカゴの大学へ留学し、会計学を専攻しました。語学留学は別ですが、正規留学は留学生に容赦ありません。現地のアメリカ人と机を並べて、普通に山ほど課題を出されるので、しっかりした英語力がないと太刀打ち出来ないのです。英会話はほとんどやらず、読解ばかりやってきたので、最初の頃はどんな課題が出たのかも聞き取れず、冷や汗たらたらでした。しかし、しっかりと英文読解を内在させた努力は決して裏切ることはなく、耳は次第に慣れて自然に英会話も上達していきました。これは体の中にベースとしての英文読解力があったからこそ、実現したことで英会話ばかり学習していたら、間違いなく脱落していたでしょう。

帰国後は憧れの外資系企業で、外国人比率50%以上の会社で働くことになりました。その時にも、重要なのは英会話力より、英文をスピーディーに正しく読解する力の方です。Eメールのやり取りや、資料を読んで自分の意見を会議などでディスカッションをするのですが、書いてあることが理解できないと英会話以前に何も始まらないのです。それに英会話ができない社員が一人でもいると、通訳が入るので英会話が苦手な人も困ることはありませんでした。私は外資系企業で外国人たちと一緒に働いて、ますます「英語は読み書きこそがもっとも重要だ」と確信しました。

私はほとんど読解ばかりを訓練してきましたが、勉強も仕事も困ることはなかったのです。

昔の人は英語学習にお金をかけようがなかった

今は無料で英語の動画を気軽に見ることが出来ますし、Skypeなどの格安英会話もありますが、別にそれをやる必要はないと思います。ただただ英文を愚直にきちんと読み続け、そしてそれをやめないで習慣化してしまうだけでいいのです。千円札に印字されている野口英世さんは外国語を独学、8ヶ国語が操れたという話がありますが、あの時代にSkype英会話も、YouTubeもありません。でも辞書と本はあったはずです。彼も英語の基礎力は読解を通じて英語力を身に付けたのではないかと思います。今も昔も、最強の英語学習法は間違いなく、「お金をかけない英文読解だ!」と確信を持っています。

英会話にお金と時間をかけるのはもうやめよう

「英語力をしっかり身に付けたいから、ドカンと自己投資をするぞ!」と覚悟と意欲が高い人ほど、高額な英会話レッスンに巨費を投じてしまいがちです。もちろん、英会話だけで英語力を付けることはできないとは思いませんが、英会話は英語を咀嚼する時間密度が英文読解に比べて圧倒的に薄い上に、相手がいないと練習になりませんから効率的とは思えないのです。

レッスン頻度の高い英会話をするわけですから、余計に英文読解を通じた学習法から離れてしまいます。なぜなら高い学費を取って「英字新聞を読みましょう!」「語彙制限された洋書を読みましょう」とスクールが言ってしまうと、「そんなことは自己学習でできる。それより英会話だ」と生徒は返してしまいたくなるのではないでしょうか。皮肉なことに、英語力向上のためにお金を存分にかけたいと鼻息荒く、意欲が高い人ほど英文読解を通じた学習法から離れていってしまうと思うわけです。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。