“春の病”とその対処法について

春という季節は、人間の心に様々な影響を及ぼすという話を聞いたことがある。

気温の変化が激しく、風が吹き、花が咲きだすことなどが影響するそうだが、はっきりした理由はよく知らない。

実際、春になると不思議な相談者がやってきた。

「優秀な学生たちが私を閣下と呼んで桜の木の下に連れ出して議論をしようとしたのです」
「どのような議論ですか?」
「卵が先か鶏が先か?」
「…」
というのもあれば、

「私は命を狙われているのです」
「誰にですか?」
「それがわかれば相談に来ません」
「…私ではお役に立てません」
というような相談もあった。

相談者はみな真剣な表情で真面目に話しているので、間違っても噴き出すようなことはできない。

多くの人々がかかる“春の病”といえば、「新年度から心を入れ替えてがんばろう!」というヤル気が出過ぎてしまうことだ。

NHKの語学講座のテキストなど、4月号だけで他の月の合計と同じくらい売れるのではないかと、私は勝手に推測している。

大学時代、“没落大王”というあだ名を付けられた友人がいた。
大学に姿を現すことが滅多になく「いやー寝坊して没落ですよ」というのが口癖だった。

大学に滅多に姿を現さないのだから冬の試験期間は死ぬ思いで乗り切る。
4月になると全科目に姿を現して「昨年で懲りたよ。今年は真面目に授業に出るよ」と宣言するのだが、きっかり1週間が終わると没落生活に戻ってしまった。

2年生の4月や3年生の4月には、「おお、今度こそ彼も改心したか!」とみんな感心したが、4年生になると「また大王の”春の病”が始まった」と諦め、みんなの期待を裏切ることなく1週間経つと姿を消した。

「4月から○○を始めよう!」という意欲は素晴らしいのだが、ほとんどの人は遂行不可能な分量を始めてしまう。「プランニングの誤謬」でも書いたが、思っていることの半分もできないのが現実なのだ。

やる時間を捻出することができずに総崩れしてしまうのが“春の病”の典型例だ。
そこで、“春の病”で総崩れしないための対策として、優先順位を付けることをお勧めしたい。

最初から絞り込むのが一番だが、ほとんどの人は自分の力を過信しているので「絞り込んでも多すぎて手に余る」場合がほとんど。絞り込まなくてもいいので、優先順位をしっかりつけよう。

5つの課題をこなしたいのであれば、優先順位を1番から5番まで付けて、1番だけは何があってもやり抜く。

1番をやり終えたら2番をやり抜く…という具合に進めていく。1番が出来ていない場合は、決して2番以降には手を付けない。

このルールを厳守すれば、最低限優先順位の1番はクリアできるし、うまくすれば2番もクリアできる。

5つの課題が総崩れするよりはるかに有効だ。

余談ながら、私は知識の劣化を防ぐため、4か月くらい前から、民法、行政法、民訴、刑法、ミクロ経済学などの一問一答式の問題集を1日1ページ(見開き2ページ)毎日欠かさず解いている。

かかる時間は15分くらいだが、すでにそれぞれの科目の半分くらいは終わっている。

何ということはない。その15分を最優先課題にしているから継続できただけのことだ。

くれぐれも無理は禁物だ。

細く長くても、振り返れば大きな成果として残るものだ。

荘司雅彦
講談社
2014-02-14

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年3月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。