なぜ楽ばかりを求めると、人生が全く楽しくないのか?

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

「楽」という字があります。読み方は「らく」と「たのしい」とありますよね?でもこの漢字を作った人は罪だと思うんですよ。なぜかというと、「楽=楽しい」とまったく思えないからです。しかし、世の中にはこの漢字の影響もあってか、「いい人生とは、優雅に暇な時間を楽しみ、ストレスや不安とは無縁に“楽に生きる”ことだ!」と考える人が結構多いと思います。

人生、楽ばかり求めて、楽にたどり着いた結果、まったく楽しくなかったという、自身の体験談を踏まえてお話をしたいと思います。

苦しい時は「楽」を出口と考えてしまう

誰しも人生の苦しい局面があるものです。

それは立場によって異なります。学生は進路に直結する試験、社会人は出世や周囲からの信用がかかったプロジェクト、そして経営者であれば低迷した売上を改善する局面です。

仕事や家庭が忙しすぎたり、しんどい状況が良くないのは、「一秒でも早くこの状況から抜け出したい!」と「楽」を出口にしてしまうことにあります。自殺もある意味、苦しい生からの脱出手段ではないでしょうか。苦しい状態に陥ると、「楽になりたい!早く楽になりたい!」が脳内を「楽になりたい」が埋め尽くします。その思考からクリエイティブなものが生まれ、精神的な充足感が得られるかことはありません。

私は過去にものすごく忙しい会社で働いたことがあります。毎日の退社時間は22時より早いことは皆無、遅い時は0時過ぎ、終電に乗って帰宅すると1時を回ってしまいます。そして職場へいくと山ほどやることがあって、怖い上司から「早くしろ早くしろ!」と毎日せっつかれるという状況でした。そんな時に考えていたのは「早く帰って楽になりたい」ということです。

もう毎日、頭の中は「早く帰りたい。早く帰りたい。」ばっかり。朝起きたら「あー、また朝が来た…早く帰りたい。」って家を出てないのに思っていました。末期状態になると、多くの人がウキウキするはずの金曜日の夜も「この貴重な時間が過ぎると土曜日、日曜日になり、そしてまた月曜日が来るのか…」と憂鬱に感じるほどでした。

適度なプレッシャーは仕事へのモチベーションになりますが、自分のキャパを超えた重圧は「早く楽になりたい!」としか思えず、疲れてくると早く帰りたいあまりに仕事の品質も落ちてしまうので何一ついいことはないと考えますね。

楽は人生のゴールではない

「じゃあやっぱり楽な方が良いじゃないか?」と思われるかもしれませんね。

現代社会に疲れた人は「ああ、もう楽になりたい」という気持ちがあるのかもしれませんが、楽にたどり着いた人が次に直面する課題は「楽だけど楽しくない」なんですよね。楽になったとしても、それだけで無条件に楽しいわけではなく、人生のゴールにはならないのです。

私は高校卒業後、半年以上ニートを経験したことがあります。その時の高揚感は今でもハッキリ覚えています。「ひゃっほー!これでゲームやり放題だ!好きなことをして遊びまくるぞ!!」と。小学校時代に体験した長い長い夏休み、それ以上の永遠とも思えるような休みが手に入ったのです。面倒くさい通学はありませんし、つまらない授業を我慢して聞かなくてもいいのです。完全なる自由を得たあの感覚を、私は一生忘れることはないでしょう。

しかし、その気分の高揚は長くは続きませんでした。どんなにハマっていたゲームも、毎日やり続けるとさすがに飽きてしまいます。ストレスはまったくありませんが、気持ちが動くこともなく、以前は夢中になれたゲームや音楽もまったく楽しいと感じなくなってしまいました。最初の症状は不眠です。夜、寝られません。「毎日こんな生活をしていて時間がもったいない。同い年の人はみんな大学に行って夢を追っているのに。」と。

結局半年ほどニートをやってみて、楽なだけでまったく楽しくない生活に心底苦痛を感じた私は、コールセンター派遣で働き始めました。今から考えると、「楽と楽しいはまったく別物」ということを心の底から理解できた貴重な体験と思っています。

仕事も人生の選択肢も楽より楽しさで選ぶべき

私は「楽しさは求めるもの、楽は結果的に得られるもの」と考えています。

これはどういうことでしょうか?楽しさとは何かしら行動をしたり、考え方を変えるなど、楽しいことを求めて得られるものです。私がフルーツビジネスで起業したのは、起業して成功する可能性が高いビジネスだから、という理由もありますが、とても楽しそうに感じたからなんですよね。そして実際、とても楽しくビジネスをしています。楽ではなく、楽しさを求めた結果、楽しさも楽さも同時に得られたわけです。でも楽さを求めて選んだ仕事は、必ずしも楽しいとは限りませんよね?

人生で迷ったら、楽ではなく楽しさを優先して選ぶべきだと思います。楽を選んで楽しさもついてくる保証はありませんが、楽しさを選べば楽は必ずついてきます。

何事も楽しもうという気持ちが重要

それから重要なのは「何事も楽しもう」という気持ちの持ち方かもしれませんね。

「人生辛いから楽になりたい」と考える人ってすごく多いと思うんですよ。私もかつてそうでした。でも環境や考え方、価値観を変えたことで、何が起こっても人生辛いと思わないようになり、その結果、何事も楽しく感じられるようになった気がします。その考え方とは「あらゆる過程を精一杯楽しもう」というものです。

「人生は幸せに生きなければいけない」

と思う人がいますが、それが過ぎるとものすごく息苦しくなるし、辛いと感じてしまう元凶と思うんですよ。「人生は良いことも悪いことも全部楽しむ」と考えておけば、悪いことが起こってもいちいち落ち込まずに済みます。実はこれを書いている前日の夜も、仕事で悪いことがありました。その時に考えたのは

「お、学習するチャンスが来たぞ!災い転じて福となすにはどうすればいいかな?もしかしてこうすればもう同じことが起きないんじゃないか?」

ということです。そして実際に同じことが起きないような再発防止策を考え、「これでもう同じことは起きない。今回考えたことがうまくいくかな?」とお気楽に捉えるようにしています。悪いことが起きたら「改善のチャンス!」と思うようにしています。

「人生は楽に生きる、楽しくて素晴らしいはずだ」という理想を持ちすぎてしまうと、「素晴らしい人生を送りたいのに、なぜ悪いことばかり起こるのか⁉︎」と物事をマイナスに捉えてしまうでしょう。誰しも人生で嫌なことはあります。だからといって楽になることばかりを考えず、あらゆる出来事をどれだけ楽しめるか?という気持ちを持つことが重要です。

迷ったら楽ではなく楽しい方を選ぶ、そして何事も楽しもうという気持ちを持つ。たったこれだけで人生はたちまちこの瞬間から輝き出すと思うのです。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。