昨日(4月3日)、自民、公明両党はカジノを含む統合型リゾート(IR)の実施法案をまとめ、カジノの入場料を6000円にすると決着しました。
カジノ入場料、日本人6千円 自公合意 月内に法案提出(朝日新聞)
これによってIR実施法であがっているギャンブル依存症対策は、
(1)入場回数は「7日間で3回、28日間で10回まで」
(2)本人確認・入場回数の確認はマイナンバーカード
(3)カジノ機器の設置面積はIRの延べ床面積の3%
(4)カジノへの入場料は6000円
といったところでしょうか。
しかしこれ、マジで考えて言ってるんでしょうか?
さんざんぱら「しっかりやる!」と言ってる依存症対策の中身がこれ?
特に依存症問題に関わっている方じゃなくても、これをみたら「ダメだこりゃ」と普通に思いますよね。
そもそも入場料が依存症対策に効果があるというエビデンスなんてどこにあるんでしょうか?
むしろ「入場料を高くすると元をとろうとしてギャンブラーは居座る」
という逆の考察は見たことがあります。
だって考えてもみてください。
カジノに遊びに行ってみようかな~と思う人がいたとして、ちょこっとだけ遊んでみよう!というレジャー感覚の健康なお客さんは「6000円も払うなら行かない」と思うでしょうし、依存症になっている、もしくはなりかかっている問題あるギャンブラーだったら、金銭感覚が狂っていますから「数百万取り戻しに来てるんだから6000円なんてどうでもいい!」と目が血走り歯牙にもかけないはずで、どう考えても依存症対策として効果が出るわけないです。
そればかりか健康的なお客さんは入らない、まさに「賭場」と化すことでしょう。
雰囲気悪そうですよね~。
これはですね、シンガポール方式ですけど、実際、シンガポールのカジノの雰囲気は「賭場」っぽくて暗いです。
どうして日本の政治家と官僚は、シンガポールの依存症対策が「うまくいっている!」と妄信しているのでしょうか?
実際に、シンガポールのカジノの記事を検索すると、日本と同じように、ヤミ金や破産や自殺の問題が出てきます。
例えば、この「シンガポールが日本のカジノギャンブルのモデルと見なされる理由」という記事にも最後は、シンガポールのカジノで破たんした72歳のおじさんが、日本政府に「カジノに入れるのは外国人だけにしとけ、さもなきゃ破産者自殺者が続出するぞ!」とコメントしてます。
ちょっと調べれば「シンガポール方式もそれほどうまくいってないな」とすぐに分かるはずですよね。
Why Singapore is seen as the model for Japan’s casino gamble(South China Morning Post)
また入場制限については、茶番としか思えません。
「7日間で3回、28日間で10回まで」
週2回 月8回の中央競馬だって、パチンコの次に依存症者が多いんですよ。
しかも12レースで終わるわけでもなく、24時間ぶっ続けで賭けられるカジノで、競馬を上回った入場制限を掲げてこられて、どうやって効果を見いだせというのでしょうか?
IRの依存症対策の目玉は、この入場料と入場制限になるわけですけど、もうこれ依存症のこと何も分かっていない政治家と官僚の皆さんが、国民に受けそうなイメージ操作で「対策やってる感」を出しているとしか思えないです。
何故、日本の現場の声を取り入れずに、シンガポールのカジノ業者の声を取り入れるのでしょうか?
この程度の対策で、カジノを推し進められたらたまったもんじゃありません。
一部の業者が大儲けするだけで、国民に大きなツケが回ってくることになるでしょう。
自殺や多重債務、そして金銭にまつわる犯罪が増え、そのために社会保障費は増大するでしょう。
しかも「ギャンブル依存症対策基本法」の中味も混とんとしたままなのに、今月末にIR実施法を提出しようというのは、真面目にギャンブル依存症対策を推進しようとしているとは到底思えません。
ここが我々にとっても最後の正念場になると思っています。
本当に、こんな程度の依存症対策しかやらないのか?
それでカジノをごり押しするのか?
今月18日に与野党の先生方を集めて、シンポジウムを急遽開催することに致しました。
皆様、是非ご参集の上、我々に援護射撃をお願い致します。
編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年4月4日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。