バチカンの「エクソシスト養成講座」

世界に12億人以上の信者を抱える世界最大のキリスト教宗派、ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁は今月16日から21日までの日程で、ローマでエクソシスト(悪魔祓い)の養成講座(非公開)を開講する。バチカンでエクソシスト養成講座は既に13回目となる。

▲バチカンで「エクソシスト養成講座」開講(バチカン放送独語電子版4月9日付から)

ローマの法王庁公認のレジーナ使徒大学(Regina Apostolorum)のペドロ・バラヨン教授(Pedro Barrajon)によると、「講座の開講は神父たちの強い要請を受けたものだ。彼らは悪魔祓いに関する知識体験が十分でないことを痛感している」という。

同教授は「エクソシスト養成講座は真剣であり、科学的、神学的なものを学ぶ場だ。悪魔祓いはマギー(魔術、魔法)ではない。聖業であり、隣人愛、慈愛の行為だ」という。

興味深い点は、新しいミレニアム(新千年紀)が到来して以来、悪魔に憑かれた信者たちが増えてきていることだ。21世紀に入り、世界の教区からエクソシスト派遣を要請する声が以前の3倍以上増えてきたというのだ。

「悪魔」といっても21世紀の現代人はその存在すら信じていない人が少なくないからピンとこない人も多いと思うが、悪魔は神と同様に、歴然として存在する。神や悪魔は聖書の世界を信じるキリスト教徒や宗教人の専売特許ではない。例えば、日本でも予想外の不祥事や犯罪が派生した場合、犯行を犯した容疑者が「魔が差した」と告白するのをよく聞く。そして新しい世紀に入り、この種の想定外の出来事が増えてきたというのだ(「悪魔(サタン)の存在」2006年10月31日参考)。

エクソシストの一人、グリッファ神父は「悪魔は存在し、その様相は多種多様に及ぶ。その活動はここにきて激しさを増し、悪魔の憑依(ひょうい)現象が広がっている」と証言している。

新約聖書の預言書「ヨハネの黙示録」によれば、「終わりの日に、霊界の戸が開き、無数の霊人がこの地上界に降りてくる」という。米国のテレビ番組「スーパーナチュラル」(Supernatural)でも終わりの日、封印されていた戸が開き、多くの悪魔が地上に降りてきて、世界はハルマゲドン状況になる」という。まさに「ヨハネの黙示録」の世界だ。そこでミカエルとルシファーの2大天使が最後の戦いを展開させるというのだ。

バチカンは「霊現象と医学的現象の区別を明確に識別しなければならない」と警告を発することも忘れていない。精神的疾患を霊に憑かれたと誤解し、殴打して殺すという悲惨な事件が過去、生じた。逆に、悪魔に憑かれている人が精神的疾患と受け取られ、薬漬けになるケースも少なくない。そして後者のケースを回避するために、専門の教育を受けたエクソシストを養成しなければならないというわけだ。

バチカン法王庁は1999年に、1614年のエクソシズムの儀式を修正し、新エクソシズム儀式を公表した。それによると、①医学や心理学の知識を決して除外してはならない、②霊に憑かれた人間が本当に病気ではないかをチェックする、③秘密を厳守する、④教区司教の許可を得る―など、エクソシズムの条件が列記されている。

なお、ローマ・カトリック教会で有名なエクソシストは、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世、べネディクト16世から破門宣言を受けたザンビア出身のエマニュエル・ミリンゴ大司教、そして2016年9月に亡くなったガブリエレ・アモルト神父だ。
アモルト神父は1994年、「国際エクソシスト協会」(AIE)を創設、バチカン法王庁聖職者省は2014年7月3日、AIEをカトリック団体として公認している。AIEには公認当時、30カ国から約250人のエクソシストが所属していた。

いずれにしても、21世紀に入り、霊界が地上界に急接近してきたという。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年4月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。