複利は“重利”なので悪いことか ⁉︎

あなたが日本に大いに貢献し、財務省があなたの貢献を忖度し、もとい賞賛し、1年で10%の金利の付く額面100万円、満期3年の国債を特別にくれたとしよう。

その際、「毎年の金利はどうしますか?毎年受け取っても構いませんし、元金に組み入れて3年後にまとめて受け取ってもかまいませんが」と尋ねられた。

何といっても10%の高金利なので1年で10万円の利息がもらえる。
しかし、せっかくの記念品なので、あなたは3年後にまとめてもらうことに決めた。

「元本に組み入れてください」とあなたは答える。

「元金組み入れ」という言葉を聞いた法学部出身の財務官僚Aさんは、ちょっと嫌な顔をした。
驚いたあなたの顔を見て、「いえいえ、元本組み入れは悪いことのようだと大学で教わったのを思い出しまして…」と言って、民法405条の条文をあなたに見せた。

民法405条は、以下のように規定している。

利息の支払いが一年以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

Aさんの大学時代の民法の教授は、「金貸しは最初から契約書に元本組み入れの同意を入れておいて、民法405条の催告なしでどんどん借金を膨らませてしまう」と怒っていたとのことだ。

法律学では、利息を元本に組み入れ、利息にも利息を付けることを「重利」と呼ぶ。
「重ねる利息」は「重い利息」となるので、言葉のイメージは悪い。

思わず、「重利とは 利息を重ねて 高金利」と一句詠んでしまう。
ところが、Aさんの同僚で経済学部出身のBさんは「そんな発想してるから、法学部出身は頭が固いんだ」と、常々Aさんをからかっていた。

「重利なんて言葉自体が古臭いんだよ。昔のワイドという銀行の商品は半年複利で顧客から預かったお金をどんどん増やしてあげた。その分、半年複利という同条件で企業に貸し付けるのは当然のこと。複利を重利なんて言って拒否反応をしてたら、ファイナンス理論なんてさっぱりわからないぜ」

Bさんの言う通り、複利がわからないとファイナンス理論など到底理解できない。
あなたがもらった国債、利息を元本に組み入れたら3年後の満期にはいくらになるのだろう?

毎年10万円ずつの利息だから130万円になる???
1年後、あなたの100万円は、10%の金利が付くので110万円になる。

100万円×(元本分の1+金利分の0.1)、つまり100万円×1.1=110万円になるのは容易に理解できるだろう。

2年後はどうなるか?
1年後の110万円に10%の金利が付くので、110万円×1.1となり121万円になる。

同じく、3年後は121万円×1.1で133万1000円になる。
130万円よりも3万1000円も多くなるのだ。

100万円×(元本分の1+金利分の0.1)の、カッコ内の(元本分の1+金利分の0.1)を3乗(3回かける)すれば3年後の、5乗すれば5年後の、10乗すれば10年後の金額になる。

元金と金利が決まっていれば、元金×(1+金利)の、(1+金利)を何乗するかで、何年後かに受け取れる金額が決まる。

100万円で金利が5%なら10年後にいくらになるか?
100万円×(1+0.5)の10乗で計算すればいい。100万円に1.05を10回かければいいので、電卓でもできる。

ちなみに、金利が10%だと7.2年後には、元金の100万円は2倍の200万円になる。
72ルールといって、72を金利で割ると元金が2倍になるのに必要な年数がわかる便利なルールだ。

たとえば、金利が1%だと、72÷1なので元金が2倍になるのに72年もかかってしまう。
カードのリボ払いの実質金利は14%くらいなので、72÷14で5.14年強で元金が2倍になる。

ちなみに、金利の違いが、長期間に経過によってに大きな差を生み出すことも憶えておこう。
元金100万円で期間を30年とすると、金利2%だと30年後には181万円強、金利4%だと324万円強、金利6%だと574万円強となる。

金利の4%の違い(6−2%)が、30年後には393万円の金額の差(574万円−324万円)になってしまうのだ。
元金が100万円なので、元金の約4倍もの”差”が出てくる。

これも複利の妙味であると同時に恐ろしいところだ。

荘司 雅彦
PHP研究所
2013-01-23

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。