パーティ・ハリーが涙を流した日

英国ロンドン近郊のウィンザー城内の聖ジョージ礼拝堂で19日、英王室のヘンリー王子(33)と米女優のメーガン・マークルさん(36)の結婚式が挙行された。ウインザー周辺では10万人以上の人々がヘンリー王子夫妻の新しい門出を祝った。

▲ヘンリー王子とマークルさんの結婚式(2018年5月19日、英BBC放送の中継から)

当方は朝早くからテレビをつけ、結婚式を追った。オーストリア国営放送は朝10時過ぎから欧州の王室を紹介する番組を流していた。どの局も王室問題専門家が招かれ、さまざまなエピソードなどを紹介していた。当方は地元英BBC放送を中心にヘンリー王子とメーガンさんの結婚式を観た。

王室の結婚式を見る楽しみの一つは、招かれたゲストの面々を見ることだ。ヘンリー王子(愛称ハリー)の場合、独身時代の広範囲な交流もあってか、いろいろな職種の人々が招かれていた。元サッカーイングランド代表のデビット・ベッカム氏夫妻、ヘンリー王子の母親ダイアナ妃が亡くなった時(1997年8月31日)、追悼する歌「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」を作曲し、歌ったエルトン・ジョンの姿も見られた。

今回はヘンリー王子の意向もあってか、現職の政治家は誰も招かれなかった。当方がゲストの中で見つけた唯一の政治家は英国元首相のジョン・メージャー氏(在位1990~97年)だけだった。また、メーガンさんが米女優だったこともあってハリウッドから多数の俳優が招かれていた。代表的なところでは、ジョージ・クルーニーさんと奥さんの人権弁護士アマルさん夫妻が見られた。

マークルさんがヘンリー王子と知り合った時に米テレビシリーズ番組「スーツ」(2011年開始、7シーズン)でパラリーガルのレイチェル・ゼイン役で出演中だったこともあって、そこに出演していた主要な俳優たちがほとんど招かれていた。
大手法律事務所ピアソン・ハードマンで展開される物語「スーツ」(SUITS)の中で結婚するマイク役のパトリック・J・アダムスさん、主人公の敏腕弁護士ハーヴィーを演じたガブリエル・マクトさん、脇役を演じた弁護士ルイス・リット役のリック・ホフマン氏、ハーヴィーの女秘書ドナのサラ・ラファティさんといった具合だ。まるでウインザー城にスーツのスタッフ、俳優たちが総動員されたみたいだった。

メーガンさんの母親がアフリカ系ということもあって、ヘンリー王子との結婚では様々言われたが、世論調査によると、英国民は、米女優で離婚歴があり、母親が非白人系というメーガンさんに抵抗感は少なく、歓迎する声の方が圧倒的に多かった(「急変する欧州の王室」2010年12月28日、「欧州王室に『幽霊』と『天使』が現れた」2017年1月6日参考)。

ところで、ヘンリー王子の兄、ウィリアム王子のキャサリン妃(愛称ケイト)はウィリアム王子と結婚することが学生時代からの彼女の人生目標だった。だから、王室入りするため彼女の両親も財政支援など多方面で応援したという。同じように、メーガンさんも若いころから王室入りを夢見ていたというのだ。ヘンリー王子と知り合う前には、付き合っていた男性がいたがヘンリー王子と知り合うと直ぐその男性と別れ、男性から電話がきても決して取らなかったという。それほどメーガンさんは英王室入りを願っていたわけだ。故ダイアナ妃の2人の息子のお嫁さんはいずれも王室入りを願い、それを実現した女性というわけだ。

ヘンリー王子にはメーガンさんと知り合う前、長く付き合ってきた女性がいたが、彼女は堅苦しい王室生活を嫌い、ヘンリー王子の結婚申し出を断ったという。若い一般の女性にとって英王室に入るということは簡単ではないわけだ。なお、メーガンさんはヘンリー王子と結婚後はサセックス公爵夫人と呼ばれる。

蛇足だが、英国人は賭けが大好きでなんでも賭ける。同国の代表的ブックメーカー「ウィリアムヒル」は「式でヘンリー王子がメーガンさんと結婚するかと聞かれた時、“ノー”と答える」という賭けをした。そのオッズは100倍以上だった。もちろん、ハリーは「イエス」と答えた。ヘンリー王子は式中、度々涙を拭いていた。あのパーティ王子と呼ばれ、少々、型破りな行動が多かった王子の頬に涙が流れたわけだ。

英国王室はその規模と歴史から言っても欧州王室を代表している。そこに新しい女性が入ってきた。それを「近代化した英王室」と評する声が聞かれる。多分、そうだろう。サセックス公爵夫妻に幸があることを祈る。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。