ギャンブル等依存症対策総括!そしていよいよIR法案審議入り

田中 紀子

昨日(5月25日)、ギャンブル等依存症対策基本法が、衆議院を通過いたしました。

速攻で、IR実施法が審議入りしたことは、あまりに露骨な感じで嫌~な気持ちにはなりましたが、何はともあれ、本当に基本法が実現するのだと、感無量です。

立憲や共産の先生方は反対されましたが、最後は、前向きな反対と申しますか、ただ単に審議拒否するということではなく、きちんと政策論争をなさってくださったことには、心より御礼申し上げたいと思っております。

特に、立憲の初鹿明博先生は、立憲案の提案者であられ、党の方針で、事前協議には参加できなかったものの、自民の中谷元先生とは、アルコール健康障害基本法を成立させた仲であり、審議入りしてからは、ギャンブル依存症対策費の財源や、ギャンブル産業の広告の在り方など、現状の問題点にずばずばと切り込み、八面六臂の活躍をして下さいました。

最後の最後で、参考人招致がかない、かなり濃く内容について議論されたことは、本当にありがたかったです。

衆議院インターネット中継より

私も参考人として、発言させていただきました。

審議の様子は、こちらからどうぞ。

衆議院インターネット中継ギャンブル等依存症対策基本法案(196国会衆20)

さて、ギャンブル等依存症対策基本法ですが、なんといっても目玉は当事者家族を含む「関係者会議」が実現したことです。これを入れることを、官僚が拒否し続けていたようですが、官僚主導で作られてしまえば、IR法案のように、とんちんかんな依存症対策で終わってしまうこと間違いないです。
現場の声を聴いてもらえる仕組みができたことは、本当によかったです。

中谷元先生はじめ、当初の法案の提出者である自公の先生方自らが、関係者会議の実現にお骨折り頂くという、本当に珍しい法案で、マスコミによっては「与党が折れた!」なんて書かれたところがありましたが、あれは正確には官僚が折れたんですよね。議員の先生方は最初から皆さん「関係者会議は必須」とおっしゃってたんですから!

さて、ではこの基本法、最後の最後立憲の先生らが反対されたのは何故か?
それは、財源をギャンブル産業側に負担させるという、応益負担が実現できなかったからなんですね。

これは確かに、現行法を大幅に変えなくちゃならない訳ですから、めちゃくちゃ大変だとは思いますけど、世界の取り組みをみたって、ギャンブル産業に依存症対策費を拠出させています。

日本は、最大のギャンブル産業であるぱちんこに、ギャンブル依存症対策を義務付けてこなかったばかりか、公営競技のような公共の福祉のための納付金もなく、ギャンブル依存症対策費の負担もさせず、不正釘をゆるし、巨大産業として大儲けさせてきたんですよね。ここに何らかの応益負担制度を取り入れることは、当然のことだと今も私は思っております。

また公営競技は「公共福祉費」と謳いながら、ギャンブル依存症対策費に関しては、一銭も拠出してこなかったわけです。

競艇などは、2015年まで堂々と「競艇によるギャンブル依存症者は殆どおりません。」と公言していたくらいです。政府はまず、この公営競技によって賄ってきた福祉費と、ギャンブル依存症問題による、社会負担費の比較から出すべきです。

「ギャンブル依存症対策をしっかりやる!」この口約束というか、二枚舌だけは絶対に信じられません。
なんせですね、昨日立憲の高井崇先生に出していただいた質問主意書の回答が返ってきてですね、びっくりしちゃったのですが、厚労省の平成30年度の依存症対策予算6.1億円のうち、アルコール・薬物を除く、ギャンブル依存症のためだけに裂かれた予算は、1942万7000円だっていうんですから!

これがIR推進法が通過して「しっかりやる!」と言った現実なんです!
ここの278番を是非ご一読ください。

ギャンブル依存症問題の監督体制に関する質問主意書

やはり対策費の財源確保は、今後も訴え続けねばならない、
大きな課題だと思っております。

そして、日本大学の問題と米朝首脳会談の話題で、すっかり影に隠れてしまいましたが、いよいよIR実施法が審議入りしました。日本にカジノが誕生する日も本当に来ちゃうのです。

こちらはそれこそ「世界最強の規制」などと安倍総理がおっしゃっておりますが、意味のない規制は、日本の首を絞めるだけ、これは本当にまずいプランです。

なんせ「入場料」も「入場回数」もなんのエビデンスもないままに、「やってます感」を出すためだけに作られたようなものですから。

どうか、IRも強行採決などにならないよう、しっかり審議していただきたいです。
野党も絶対に審議に参加してください。さらにマスコミの皆さんも、結果だけを「強行採決!」と煽るのではなく、問題点から取り上げ、政策論争が進むようアシストしていただきたいと思います。


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年5月26日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。