無人サービスは行政窓口のイノベーションとなり得るか

山本 ひろこ

昨今、店舗の無人化が進んでいる。今年頭にも、AmazonGoが話題をさらった。中国ではカラオケの無人化までも進んでいる。日本でも、図書館やトレーニングジムの無人化は見かけるようになった。

しかし、両者の間には大きな違いがある。図書館やトレーニングジムは、基本的に会員制であるので、事前に人物確認ができ、有料の場合は会費の口座引き落としや定期カード請求さえできれば、現場でお金のやり取りは発生しない。一方、コンビニやカラオケなど、キャッシュオン的なサービス業においては、この課金方式は使えない。無人化のためには、キャッシュレス化が必須となる。

キャッシュレスが普及すれば、現行のサービス形態では有り得ないほどのサービス革命が可能となる。実に、中国では現金の汚さから自販機も普及しなかったくらいだが、電子マネーが普及したおかげで、今や自販機も物凄い勢いで広がっている。

理論的には同じ仕組みは行政窓口にも適応できる。マイナンバーカード認証と電子マネー対応ができれば、行政サービスを人力で行う必要性は薄い。公平に均等に対応することが求められる行政サービスでは、恣意的なサービス付加などは不要である。VIP対応もない。実は最も遅れた行政窓口サービスこそ、システム対応が最も適した業務なのである。ゆえに大半の行政窓口サービスは無人化に非常に適している。

となれば、行政窓口で必要なのは相談業務だけになる。相談業務すら、オンライン予約制にすれば、無駄に並ぶ必要もなく、無駄に人員配置する必要も無い。相談員も市民も共に時間とコストの節約となる。

IT弱者や現金ユーザー対応を口実に、IT化もキャッシュレスも進まない、というのは既に時代に合致しないとしても、対面と紙を基本としたアナログなサービス提供や現金決済を残しつつ、オンライン化やキャッシュレスなどの新しい手法を導入するような、既存にありがちな中途半端な行政スタイルでは、赤字経営を増長するだけである。

原則オンライン手続き、キャッシュレス、という方針とし、これらへの対応が難しい人にはしっかりとサポート提供する、という体制にしなければ、いつまでたっても行政のIT化は進まないであろう。デジタルファースト法案も予定されているが、行政窓口のサービスにイノベーションを起こすには、「原則オンライン化」を掲げるのではなく、「紙と対面、現金の手続きは原則禁止」とすべきである。

山本ひろこ 目黒区議会議員(日本維新の会)
1976年生まれ、広島出身、埼玉大学卒業、東洋大学公民連携学修士、東京工業大学イノベーション科学博士課程後期。

外資金融企業でITエンジニアとして勤務しながら、3人娘のために4年連続で保活をするうちに、行政のありかたに疑問を抱く。その後の勉強会で小さな政府理論に目覚め、政治の世界へ。2015年、目黒区議選に初当選。PPP(公民連携)研究所、情報通信学会所属。