私が塾長を務める「未来日本」政治塾。
7月26日、日本が直面する社会課題の解決に燃える30人の地方議員が新宿に結集し、いよいよ開講しました。私たちが最初に選んだテーマは、「児童虐待」。この分野の第一人者である旧知の駒崎弘樹さん(NPO法人フローレンス代表理事)を講師にお迎えし、質疑応答は予定時間をオーバーして白熱しました。
政治塾の最初の課題は「児童虐待」
6月上旬に大きく報道された目黒区の5歳女児結愛ちゃん虐待死事件をきっかけに、児童虐待問題が改めて深刻な社会課題として国民的議論を巻き起こしました。私も国会に超党派議員連盟「虐待から子どもを守る国会議員の会」(会長:塩崎恭久元厚労相)を立ち上げ、政府に対し緊急要望を取りまとめました。政府も迅速に動き、7月25日に緊急対策を閣議決定しました。
政府緊急対策のポイントは次の4つです。
①児童相談所の増強(2022年までに2000人増)
②自治体間をまたぐ事案の連携強化
③警察との情報共有の強化
④乳幼児健診の徹底
児童虐待問題には、原因と結果の側面がある
私はかねてから、この児童虐待問題には、(他のあらゆる問題と同じく)「原因」と「結果」の側面があると考えてきました。政府の緊急対策は、主として虐待の結果に対処するものといえます。児童相談所の機能を強化して虐待された子どもの命と健康を守っていこうというのが最大の柱です。
これらを専門家の間では、川の流れにたとえて「川下の対策」と呼ばれており、他にも、①一時保護所の環境の改善、②児童相談所が持つ二つの機能(子育て家庭「支援」と子どもの命を守るための「介入」)の調整、③強すぎる親権とこれまで軽視されがちだった子どもの権利との適切なバランス、④一時保護から里親や特別養子縁組へとつなげるパーマネンシー(永続的解決)の確立、など課題山積です。
児童虐待を予防するためには「川上」の対策を
これに対し、私は、「川上の対策」、すなわち、虐待の原因である保護者による虐待を未然防止(予防)するための方策こそ、児童虐待を根絶するために重要な視点ではないかと考えてきました。
つまり、精神疾患や貧困、孤独な育児など様々な原因(要因)で子どもに対し虐待をしてしまう保護者に働きかけること(たとえば、助言や相談に乗ってあげるなど)によって、保護者を追い詰めてしまう要因そのものを除去していく地域や社会の取組みが大事ではないかと考えます。
フィンランドは、なぜ「子育てしやすい国」世界一なのか?
そう考えていくうちに、私は、フィンランドの「ネウボラ」制度に行きついたのです。
ネウボラは、フィンランド語で「ネウボ=助言する」「ラ=場所」を意味し、文字どおり子育て家庭のよろず相談を一手に引き受けてくれる施設です。しかも、妊娠がわかってから小学校に上がるまでの子ども達にとって最も重要な6年間を、原則として一人のネウボラおばさん(保健師)が切れ目なく同じ家庭の面倒を看つづけるという夢のような制度なのです。
70年以上続くネウボラは、フィンランドの子育て家庭の98%が利用しているとのこと。こんな仕組みが日本にもあれば、育児に悩む若い親御さんたちにとっては本当に安心ですね。
*フィンランドの子育て支援制度についてはコチラをご参照ください。
日本にもフィンランドに負けない仕組みをつくろう!
百聞は一見に如かず。私は9月中旬に、実際にフィンランドに行って、このネウボラ制度の実情をつぶさに視察して来ることにしました。その成果を「未来日本」政治塾の塾生たちと共有し、児童虐待の原因を日本社会から一掃するために、ネウボラに負けないような仕組みづくりに役立てていきたいと考えてます。
日本にも、子どもに関わる仕事やボランティア活動に従事している大人は沢山います。児童相談所のみならず、保健師、医師、保育園や幼稚園、小中学校関係者、教育委員会、民生・児童委員、地域の子ども会、社会福祉協議会などなど挙げれば切りがないほどです。
「未来日本」政治塾で日本の社会課題を解決しよう!
「未来日本」政治塾は、そのような日本社会が持つ潜在力をカタチに変える地域の斬新な仕組みづくりを主導していく人材を輩出することを大きな目標として掲げています。そのために、「未来日本」政治塾は、党派を超えた地方議員の研修、連帯の場を提供するものです。
したがって、巷によくある選挙に勝つためのノウハウを学ぶような政治塾ではなく、社会課題に取り組む専門家や社会起業家を招き、現場視察などの研修カリキュラムを通じて、政策力を磨き、それを具体的な行動につなげ、さらに改革を推進するための連帯の輪を全国に広げてまいります。
第1回「未来日本」政治塾の様子
塾長挨拶
白熱した質疑応答となりました。
編集部より;この記事は、元防衛副大臣、衆議院議員の長島昭久氏(東京21区、無所属)のオフィシャルブログ 2018年7月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は長島昭久 WeBLOG『翔ぶが如く』をご覧ください。