米国と中国の覇権争いが激化している。確かに習近平政権はやりすぎたが、それを許容したオバマ大統領の責任が最も重いというのが専門家の大方のコンセンサスであり、僕もそう思う。 で、「米ホワイトハウスは、米電気自動車メーカー「テスラ」が中国に工場を建設するとの報道を受け、米企業に対し、米国へ投資するよう呼びかけた。」とロシアのメディアのスプートニク日本が伝えた。
こんなメディアが日本にあることを今回初めて知った、ロシアが日本で米中戦争の激化を煽っている。世の中の情報戦が凄いことになっている。一方で、日本は外国でNHKワールドというわけのわからない番組を膨大な予算で外国で流しているが、あれも少し考えたほうがいい。 で、ロシアのことはさておき、以下がスプートニク日本の記事の引用。
サンダース米大統領報道官は「我々はすべての米企業が米国に投資することを望んでいる。私は具体的にテスラについてコメントしているが、我々は全企業に対し、その工場をここ米国に建設すること、米国に投資することを呼びかける」と述べた。
また報道官は、フェアな貿易ではないとして再び中国を批判し、米企業に対し「このような国々と不健全な協力」をしないよう、呼びかけた。
経済で世界覇権を握ろうとする中国の興隆を、さすがにまずいと思い、モンロー主義を転換して一気に中国包囲にかかっている米国の戦略は理解できるし、日本としても米国が安全保障の力点をアジアに戻して来てくれたのはありがたい。また、中間選挙を控えて、パンチーなトピックを注ぎ込んで、ある意味、「米国中西部(いわゆるラストベルト)=共和党」対「カリフォルニア=民主党」の内政のために大統領が上院・下院議会に対し主導権を握れる外交分野で得点を上げようとする戦術も理解できる。
これは僕の勝手な想像だが、この論点は3つあると思う。
1) 雇用を奪われたくない
2) 技術を盗まれたくない
3) 輸出大国中国を囲い込んでこれ以上の興隆を防いで、米国の比較優位を守りたい
これに対して、私の意見は以下のとおりだ。
第一に「雇用を奪われたくない」であるが、これは短期的には合理的だが、長期的には持続可能かどうか?自動車に関してはもうすでに中国が圧倒的な世界一の販売国で年間3000万台という勢いだ。これに対してカナダも含めた北米全体でも2000万台だ。フォードもGMも手揉みしながら現地に入っている。テスラが引いたなら、欧州勢BMWとダイムラーベンツが揉み手してアセンブリ工場の投資をしてくるだろう。因みに彼らが欧州で使う電池は日本製をやり込める目的で、韓国のLG化学やサムソンSDIそして最近では中国CATL社製を採用している。欧州と中韓は日本がハイブリッド車や燃料電池車にうつつを抜かしている間に、反日包囲網を組んでいる。
第二に、「技術を盗まれたくない」であるが、残念だけれどもうとっくに盗まれているだろう。昔は非合法的に産業スパイが暗躍しているが、今は合法的、真っ白だ。それは技術者の高報酬での引き抜きとM&A。それが米国金融資本が仕掛けたグローバル経済のルールだ。オバマ民主党政権はあまり日本が好きでなくて、どちらかというと親中的だったから、これを黙認するどころか促進したふしがある。
第三に、「輸出大国中国を囲い込んでこれ以上の興隆を防いで、米国の比較優位を守りたい」ということだ。しかし、気持ちはわかるが、プロテスタント的自由と博愛を原理とする資本主義と民主主義、自由経済という西側の論理を自らぶち壊して、例えばTPPとかWTOとか世界のルールを破壊しているのはトランプ大統領自身だ。 そうなると、世界の非キリスト教新興国を中国型独裁発展モデルに追い込むことになる。
例えば、最近選挙で批判されたカンボジアの開発独裁を批判できなくなる。
だから、すでに遅すぎた。もう中国は雇用を奪ったし、技術を奪ったし、開発独裁という新しいイデオロギーの輸出に成功した。それがグローバリズムの本質だからだ。
私がもしトランプ大統領にあったなら是非聞いてみたいことがある。今週1兆ドル企業になったアップルのiPhoneやiPadだが、それ全部中国製だけれど、同じことをアップルに言うのかと?
ということで、今のホワイトハウスは大混乱に陥っているということで、中国としてもどう対応していいかわからないというのが本当のところだろう。
漁夫の利を得るのは、日本だ。もちろん、関税制裁は日本製品も影響を受けるし、世界の貿易量が減少し、世界経済は「グローバル経済バブルが崩壊」することで影響を受けるのは間違いないが、韓国のような外需依存の国と違って日本は内需大国であり、貿易量の占める割合は比較的少ない。 しかも、グローバル経済では全く蚊帳の外に置かれていいことなしだったから、相対的優位性は高まることになる。