「心霊スポット」対策いろいろ

当方は幽霊について当コラム欄でかなりの頻度で報告してきた。ただし、当方は幽霊のロビイストではないし、幽霊ハンターでもない。多くの読者と同様、幽霊をみれば震えてくるタイプだが、幽霊が存在することは知っている。そのため、幽霊の存在を示唆するようなニュースや情報を見つければ、昔ば新聞を切り抜き、今はPCに記憶させて情報を収集してきた。

▲スウェ―デンの画家ニルス・ブロメール作「草原のエルフたち」

読売新聞電子版(8月20日)で肝試しのため「心霊スポット」にくる若者たちを追放するため軽快な音楽を流して、「心霊スポット」の雰囲気を壊す対策をしているという記事が目に入った。以下、その記事の一部だ。

「群馬県藤岡市と埼玉県神川町にまたがる下久保ダムの管理所が、肝試しに訪れる若者らの迷惑行為を撃退する奇策を打ち出した。夜間に車や人がダムに近づくと、ご当地ヒーローの軽快なテーマ曲がスピーカーから流れ、雰囲気を一変させる。周辺は『心霊スポット』との風評に悩まされており、地元では『負のイメージ一掃を』と期待が集まっている」

記事によると、十数年前、インターネットで「心霊スポット」として広まり、肝試しの若者らが騒いだり、空き家に侵入したりと地域住民を悩ませてきたという。「心霊スポット」などは馬鹿げた話だと一蹴されるかもしれないが、関係者には深刻な問題だろう。「心霊スポット」周辺の旅館や店に客がこなくなるなど、経済的損害も出てくる。

ところで、オーストリアでも「心霊スポット」と呼ばれる場所がある。例えば、交通事故が多発する場所だ。その場所には慰霊塔が建てられていることが多い。

ところで、当地のメディアによると、ドイツ・ニーダーザクセン州の高速道路A2で頻繁に事故が発生する個所がある。対策に悩んだ関係者が妖精(エルフ)の専門家に依頼し、妖精に事故を起こす霊を閉じ込めてもらった、というニュースが報じられた。オーストリア高級紙プレッセ(8月6日)にも報じられていたから、話は少なくともシリアスだろう。

妖精といっても多くの人は童話の世界だけで、見たこともないし、その存在も信じていないだろう。しかし、北欧のアイスランドでは国民の60%が妖精の存在を信じ、妖精専門家がいるほどだ。ローマ・カトリック教会では幽霊(悪霊)退治のためにエクソシストが存在するのと同じだ。

ドイツで妖精エキスパートの助けを求めた、というのは少々可笑しいが、その事故現場周辺に漂う霊を解放しない限り、事故は限りなく繰り返されるから周辺住民にとって深刻だ。多分、エクソシストが事故現場にいる悪霊の追放を試みたが失敗。そこで悩んだ末、妖精の専門家に話が持ち込まれたのだろう。

「心霊スポット」は簡単にいえば、幽霊(悪霊)が出てくる場所だ。そして幽霊が出てくるのはそれなりの事情が必ずある。理由なくして幽霊が飛び出すことはない。

①亡くなった人が浮かばれず、その場所から離れることができない。幽霊となってその周辺に住み着く。彼らの多くは恨みを抱えているから、その恨みを晴らすために関係者にとりつく。
②交通事故で突然亡くなった場合、亡くなった運転手は自分が死んだことを分かっていないため、事故現場周辺にウロウロしている。彼らには「あなたは死んだ」と伝える必要がある。
③戦争や紛争で亡くなった人が霊界に行かず、この地上に幽霊となっている場合がある。ウィ―ンの日本レストランの地下には第2次世界大戦時の空爆で亡くなった人の幽霊がいた。ウエイトレスは夜になると、地下から不気味な音が聞こえてきたという。

多くの幽霊はこの世の未練が強く、無念、後悔、恨み、復讐心といった思いを抱いている。幽霊はマイナスのエネルギーを放出しているから、その周辺に近づくと、怖くなったりする。肝試しで「心霊スポット」を行くのはやはり危険だ。幽霊は自分と似た性格や事情の人間が近づくと急接近してくるからだ。

ちなみに、「心霊スポット」で音楽を流し、幽霊が出そうな雰囲気を壊すという発想は悪くないが、一時的な対応であり、問題の根本的解決とはならない。幽霊が出てくる場所、その周辺の歴史を研究し、幽霊が「誰か」を突き止める必要があるからだ。その点、欧州では幽霊に関する研究は進んでいる。アイスランドではエルフの存在について博士論文を書く学者もいるという。

幽霊の場合、その存在を認知して、その幽霊のために祈ってくれる人が出てくれば、癒される。死んだ人の悲しみ、恨みを聞き、それを解き明かすことで、彼等を所定の霊界に送ることができれば幸いだ。ある意味で、米TV番組「スーパーナチュラル」(Supernatural)や「Ghost Whisperer」が描く世界は少々、極端な場合もあるが、大きくは間違っていないだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。