勤務先企業の株を買うのは“超慎重”に!

荘司 雅彦

従業員は、自社株の購入を勧められることがある。
従業員持株会に入会して給与天引きで財産形成を図るケースだと奨励金が付くので、それなりにお得感がある。

このような制度がない場合でも、なにかにつけて従業員に自社株を買わせようとするケースが多く見られる。
社内を挙げての「自社株購入キャンペーン」のようなものもあるかもしれない。

私が旧長銀に在職していたとき、自社株買いを半ば強制的に勧められた。
退職後、生活資金に困って売却したが、旧長銀破綻まで残っていた多くの同期たちは持っている自社株がゼロになって大変な損害を被った。

先般、旧富士銀行、みずほ銀行を経て某企業の役員として活躍している大学時代の同級生と会ったら、「まだまだ含み損が大きくて困っている」とボヤいていた。
聞くところによると、旧富士銀行在職中に何度も購入させられた自社株が、時価(みずほHDの株価)を大きく下回っているとのことだった。

みずほ銀行の一つとなった興銀などは、時価総額が最高になった時期があるので、その時期に自社株を買った行員は大変だろう。

従業員が自社株を購入するのは二重のリスクを伴う。
会社が倒産すると、収入源が絶たれると同時に資産であったはずの自社株もゼロとなる。
まさに、踏んだり蹴ったりの状況に陥る。

役員報酬に自社株を組み入れるのは、インセィブ報酬として広く認められている。
経営陣がしっかり経営すれば株価が上昇して自己資産も増えるが、経営を怠けていたり間違った経営を行うと自己資産も毀損してしまう。
株主としては、インセンティブ報酬によって経営陣を間接的にモニタリングすることができる。

しかし、従業員はあくまで労働者に過ぎない。
経営陣の失敗のツケを、自己資産の毀損という形で払わされたのではたまらない。

昨今、確定拠出年金が普及しているが、自社株を組み込む会社もあるそうだ。
確定拠出年金の運用先として自社株を選ぶのは、二重のリスクを負うことになるので絶対に止めるべきだ。

従業員持株会は奨励金というメリットがあるので、加入するかどうか悩ましいところだ。
とはいえ、あまりたくさんの資金を自社株に振り向けることのリスクは知っておくべきだ。

大手銀行の自社株を買ったとき、誰もが破綻したり合併して大暴落するなどとは思っていなかったはずだ。
従業員は、法的には労働者であって原則2年任期の取締役とは全く立場が異なる。
両足を泥船に入れることだけは避けた方が無難だ。

荘司雅彦
PHP研究所
2011-12-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年8月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。