アルゼンチンのインフレ率が40%へ進行。先進国では最大

白石 和幸

南米のアルゼンチンという国は豊富な自然資源と食糧に恵まれ20世紀初頭には世界のリーダー国の一角を担っていた。また、ブエノスアイレスは「南米のパリ」と呼ばれるほどに文化も発展していた。その影響は今も堅持されていて、ラテンアメリカの文化の流れはアルゼンチンが起点とされている。

ところが、経済面となると、アルゼンチンは劣等生で戦後デフォルトを8回も繰り替えしている国で、高率のインフレというのも当たり前となっている。その根底にあるのはウルグアイのムヒカ前大統領が指摘しているように、「アルゼンチンは余りにも自然資源に恵まれているのが不幸だ。だから無駄使いするようになってしまう」ということで、アルゼンチン人の国民性にその豊かさが今も根付いているようで危機意識に常に欠ける傾向にある。

経済破綻を繰り返すアルゼンチンの通貨(Louise Morgan/flickr:編集部)

この点は、アンデス山脈を背中にして反り合わせた隣国チリとは正反対である。チリ人は領土は狭く細長く狭い国で国家を豊かにするための努力を国民がこれまで行って来ている。

アルゼンチンの危機意識への欠如は最近のマクリ大統領の高いインフレを前にしての発言でも見ることができる。彼は今年のインフレが30%になることが予想さた時に、第2都市コルドバ市を訪問して市民を前に「(商品を)見比べる為に歩くことです。価格は30%の値上げになっているからです。価格が落ち着くまで価格を比較して行きましょう」と語ったのである。そのように語ってひと月も経過しない8月には、インフレは31%になった。

現在のアルゼンチンは毎月インフレ率が上昇していて、留まることがない状況になる。この速度で行けばクリスチーナ・フェルナンデス前大統領が政権を去る2015年の40%のインフレと肩を並べるようになりそうだ。その一方で自国通貨ペソよりも国民はいつもドルを信頼する傾向にあり高騰している。

この厳しい状況を今年5月に既に見越していたのか米国誌『Forbes』が「多分、アルゼンチンから去る時が来たようだ」と指摘した内容の記事を現地紙『PERFIL』が同月報じた。

マクリ大統領が2015年12月に就任した時には改革をテーマに掲げて非常に期待された。それまで8年間のクリスチーナ・フェルナンデス前大統領のベネズエラのチャベス前大統領に追随した外交政治と40%のインフレと外貨不足で景気が後退していたことを刷新してくれると国民はマクリ大統領に期待したのであった。

ところが、彼のこれまで3年間の政治はフェルナンデス前大統領と同じ道を踏襲する方向に向かっているようである。

外国からの投資も薄らいでおり、逆に資金が外国に持ち出されているという現象が起きている。最近6か月間に外国に流出された資金は166億7600万ドル(1兆8300億円)で、それに2015年12月からの流出した凡そ340億ドル(3兆7400億円)を加算すると500億ドル(5兆5000億円)となる。それはアルゼンチンがIMFと合意した融資枠500億ドルに相当する額になるのである。これが意味するものは、アルゼンチンへの期待が失われているということである。

また、現在の中銀の金利は60%に上昇。企業取引で支払満期に資金不足で未払いとなった率は7割上昇し、その未払い総額は67億7200ペソ(250億円)になるという。しかも、ペソの対ドルの下落も毎日のように続いている。

アルゼンチン・フォルクスワーゲンのエルナン・バスケス社長は金利が50%になって時に「50%に至るこの高い金利では、如何なる産業もビジネスも成り立つことはできない」と厳しい批判をしていた。

マクリ大統領になってから、産業分野では73800人の雇用が喪失。一方、給与の上昇率よりも、インフレの上昇率が常に上回り、購買力がそれに追いつかず消費は冷え込んでいる。

この様な事態にあるアルゼンチンの今後の成長は全く期待できないのである。