スルガ銀行が「東京23区」と「それ以外」の2極化を加速させる

内藤 忍

スルガ銀行、東日本銀行、そして西京銀行と、地方銀行の不祥事が立て続けに発生しています。

Wikipedia:編集部

スルガ銀行はシェアハウスの融資資料改ざん疑惑、東日本銀行も法人向け取引で業務改善命令、そして西京銀行はアパートの施工、管理を手がけるTATERUの融資資料改ざんに関わっていた疑惑を持たれています。いずれも地方銀行の収益向上に対する「焦り」がその背景にあると感じます。

一連の出来事によって、地方銀行が積極的に展開してきた郊外や地方の一棟ものに対する融資が厳しくなりました。その結果、買い手が減って、価格が下落する動きが顕在化してきました。

地方物件の中には、次の買い手にどの銀行もローンを出さないものも出てきており、こうなると売ることもできず、出口が塞がれた形になってしまいます。

一棟ものを手掛ける不動産会社の中には、保有する物件在庫の含み損が拡大し、事業を継続できない会社も出てきました。六本木交差点にオフィスを構え、派手な露出で事業を急拡大してきた不動産会社も先月末で廃業。不動産会社の破たんはこれから急激に増えると予想します。

個人投資家の中にも、地方一棟もの物件を銀行ローンによって急激に膨らませてきた「メガ大家」と呼ばれる人たちがいます。優良な物件を保有していれば別ですが、全体の傾向として、今後空室や家賃の下落、更に金融機関の融資姿勢の変化によって、地方・郊外物件の不動産リスクは急速に高まります。

一方で都心の投資用不動産は絶好調です。空室になっても短期間で申込が入り、むしろ家賃を引き上げる良いチャンスになっています。

家賃の上昇と共に物件価格も上昇気味で、都心3区(千代田、中央、港)の好立地物件は希少性が高まっています。

都心の投資用ワンルームマンションには、オリックス銀行をはじめとするイノベーティブな金融機関が積極的に融資をしています。オリックス銀行は5月から融資期間を最大35年から45年に10年延ばしました。また、ガン団信と呼ばれるガンのステージ1と診断されるとローン残額が補償されるサービスも追加しています。守りに入る地方銀行とは対照的なアグレッシブなスタンスです。

先月はローンの申込が殺到し、融資セクションが対応しきれないくらいの融資実行件数になっているようです。

2つの投資用不動産マーケットを見て思うのは、金融機関の違いによって日本国内の「2極化」が更に加速する可能性が高まっているということです。東京23区とそれ以外で、別世界のようなマーケットになって、それが更に顕著になる。

これからどこに投資すべきかは、明らかだと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年9月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。