北海道胆振東部地震は、北海道の産業を直撃している。とくに酪農業は深刻で、停電や断水の影響により生乳を廃棄せざるを得ない状況に陥っている酪農家も少なくない。温泉などの観光業への影響も懸念されている。紅葉シーズンを前に嘆息が聞こえてくる。
先月、『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる! お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)を出版した、ファイナンシャルプランナーで社労士の川部紀子さんは札幌の自宅で被災した。幸いケガや被害は無かったものの、初めて体験する大きな揺れと、37時間の停電、マンションの断水、独特の空気感を体験したそうである。
地震の実体験から見えてくること
「午前3時過ぎに大きな揺れがあり、地震の直後に停電になりました。マンションのエレベーターは停止していたので、階段を降りて近所のコンビニに向かいます。コンビニは真っ暗ですが営業をしていました。しかし、停電中のため会計は現金のみでした。完全キャッシュレスの人だったら困り果ててしまったように思います。」(川部さん)
「私は、これまで連載の中で何度か書いてきたように、コンビニではクレジットカードか電子マネーで買い物をすべきだと考えています。幸い、必ず現金も持ち合わせるようにしていたので買うことができましたが、クレジットカードか電子マネーだったら、何も買えませんでした。コンビニATMも動いていませんでした。」(同)
川部さんによれば、その後、現金を持ち合わせていなかった人が銀行へ押し寄せてきたそうだ。大半の銀行ATMが動いていなかった。自家発電で動いているATMがあったことも考えられるが、いずれにせよATMの数にも限界がある。非常に、現金が手に入りにくい状況であったことは間違いない。
「現金が必要なのに、現金が手に入らない状況を目の当たりにして、ある程度の持ち合わせの必要性を実感しました。私は、このような非常時のためにポチ袋に緊急資金の1万円を入れてしっかり封をすることを推奨しています。今回は、リアルに『緊急資金』の必要性を感じました。また、地震保険についても考えました。」(川部さん)
「地震保険は損害の程度によって保険金の支払いが決定されるのですが、家の中のものが1つくらい壊れても、支払われない可能性が高いのです。一部損の場合、時価が家財全体の10%以上となる損害に該当してはじめて可能性が出てきます。つまり、「○○だけが壊れた」という場合、全体の10%には達することは考え難いと思います。」(同)
さらに、川部さんは、地震保険は火災保険に付けるオプションなので、まずは火災保険ありきだと解説する。いずれにしても適用内容を確認しておくべきだろう。
被災地のためにできること
川部さんは「はじめてのふるさと納税フェア2018」というイベントでミニセミナーの講師を担当する予定だった。しかし、電力をはじめとするライフラインや交通機関に大きな影響が生じていることから中止にいたる。実業への影響も少なくないだろう。
「『何か必要なものはない?送りますよ』と声をかけられる人がいます。しかし、被害が大きくなければなにも必要ないと考える人もいます。個人宛の荷物の増加は、物流を混乱させて支援を遅らせるリスクがあります。あたたかい気持ちは有難いですが、本当に必要なものか困っているのか考えてもらえると嬉しいです。」(川部さん)
「どうしても個人宛に何かしたいのであれば、『心ばかりのお見舞いを』と振込先を聞くのが一番いいかもしれません。断られる可能性が高いですが、そのくらいの気持ちがあることは伝わるでしょう。また、被災地で、何が必要で足りないかを正しく把握することは大変難しいと思います。必要なものは刻々と変わってくるからです。」(同)
まずは落ち着いて、いまできること、あとですべきこと、本当に被災地のためになるのはなにかを考えるのが大切かも知れない。
追伸
「平成30年北海道胆振東部地震」で被害に遭われた皆さまに対し、謹んでお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧を心よりお祈りいたします。
尾藤克之
コラムニスト