がん検診にも「格差」?非正規、自営業は要注意 !!

松村 むつみ

ここのところ、樹木希林さん、さくらももこさん、山本KIDさんなど、著明な方々のがんによる訃報が相次いでいます。後者のお二人に関しては、あまりにも若い死に、ご冥福をお祈り申し上げるとともに、若年や壮年でのがん死亡を、どうしたら減らせるのかを考えてみようと思います。

多くの人が、検診がまず頭に浮かぶのではないでしょうか。わが国は、国際的に見てもがん検診の受診率は低く、50%に満たない状態です。調査では、「忙しいから検診に行く暇がない」と考える人が多いとともに、「いつでも病院にかかることができるから」という回答も上位にきており、忙しい日々の生活や、病院が基本的にはフリーアクセスであり比較的受診のハードルが低いなど、わが国のライフスタイルや医療の構造的問題と関わりのある回答のようにも思えます。

一般に、がん検診は、早期発見をすることにより死亡率を低下させることを目的としており、効果(エビデンス)が確認されている検診には、公的な自治体からの補助が出ることも多いです。

一方で、死亡率低下の証明されていない検診や人間ドックの項目も多く、過剰診断や検査による被曝などの問題もあり、現在行われている検診や人間ドックが適切かどうか、今後も繰り返し議論されていく必要があるでしょう。また、リスクとベネフィットを天秤にかけて、受診するかどうかを決めるリテラシーも必要になってきます。

ところで、検診の受診率が、雇用形態などの属性によって異なることをご存じでしょうか。調査では、検診受診率は正規雇用者で最も高く、次いで非正規、自営業となっています。雇用主は雇用者に検診を受けさせる義務があり、これにより、雇用者が検診を受けるインセンティブが働きます。

しかし、自営業では忙しさにかまけて「まあ、そのうち」となりがちだと思います。お亡くなりになった著名人の方々も、雇用者ではなくフリーランスや自営業という形態の方が多かったかもしれません。著名人や、比較的金銭的に余裕のある一部の自営業の方は、検診とは親和性が低く、怪しい治療も多く含まれる、高額な自由診療に親和性が高いこともあり得ます。

資料1.は、過去1年間に検診(がん検診に限らない)を受けた人・受けなかった人の就業形態別検診受診率で、正規職員が最も高く(87%)、次いで非正規(70%)、自営業は57%ともっとも低い数値となっています。

資料1.2016年度厚生労働省「国民生活基礎調査」のデータより筆者作成

また、添付資料2.は、内閣府に依頼されて楽天リサーチが2016年に行った乳がん検診の就業形態別データですが、やはり、正規>非正規>無業(家事労働者)となっています。

資料2. 就業形態別乳がん検診受診率(2016年、楽天リサーチ)

エビデンスのある検診については、忙しいからといって後回しにせず、定期的に受けるように心がけることをおすすめします。