古い常識・知識を断捨離出来ない人は「時代」に殺されます

黒坂 岳央

こんにちは!黒坂岳央(くろさか たけを)です。
※Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

「知識や情報はあればあるほど良い」、そのように考えている人は結構多いのではないでしょうか?実は私自身、昔はそのように考えていました。物理的にかさばるモノと違い、知識や情報はスペースを取ることがありませんから、「たくさん持つことで身動きが取れなくなり、コストがかかるということはない」と思われています。

しかし、実際そうではありません。知識や情報もモノと同じで、捨てなければいけない時が必ずやってきます。なぜかというと、古くなり、役に立たなくなった常識や情報を持っていることで、新しい情報や常識が自分の中に入らなくなってしまうからです。

物事を学ぶのは英語で「Learn(ラーン)」といいますが、その逆に「Unlearn(アンラーン)」という言葉があるのです。今回は「アンラーン」の重要性についてお話をしたいと思います。

平成の終わりに昭和の常識を持ち込む有害さ

有効な生存戦略はその時代ごとで異なります。昭和の右肩上がりの経済状況において良しとされた生き方は、平成の今とは異なるのです。過去に有効だった生存戦略が今や全く通用しなくなっているにもかかわらず、現在にそのやり方を持ち込んでしまう時に問題が生じます。

特に残業についての考え方は、世代間で認識が異なるケースが見られます。昭和の経済が右肩上がりだったタイミングでは、社会も個人も分かりやすい人生のロールモデルがありました。目指すべきゴールや、やることも明確、そんな大きな経済発展を遂げているさなかにおいてはとにかくがむしゃらに働くことで、「努力と成果が正比例」していました。

そんな時代の生存戦略は、「とにかく他人よりも一歩先に足を踏み出す」ということです。言い方を変えれば、「成果を出したければ馬車馬のように働け」です。人よりもたくさん時間を投下することで、その分確実に前に進むことができるならば、「残業は美徳」という概念があるのは頷ける話ではあります。

しかし、平成も終わろうとしている今、もはやそのような概念は通用しません。なぜなら仕事の質が大きく変化しているからです。労働集約型の働き方が通用しないホワイトカラーは特にそれが顕著です。事務職ひとつとっても、人海戦術と時間を投下して力技を持ってガンガン書類を処理する時代は終わりました。現在の事務処理における正義とは、ズバリ「効率化」です。

朝から夜まで、そして昼休みも返上して休まずに伝票処理をしている人と、効率化ツールを開発してワンクリックでたった5分で全く同じ結果は出せる人がいるならば、後者の方が評価されるのです。脳に汗をかき、同じ結果をより低コスト、短時間で効率化を実現できる人こそ「今の時代の勝者」となるわけです。そのような時代において、「残業せずにさっさと帰るのはやる気がない」と昭和のワークスタイルの概念を持ち出すのはおかしな話です。頭脳労働者に従事している人こそ、仕事が終わったらさっさとオフィスから出ていって、次の効率化につながる勉強や知識、情報の仕入れに奔走するべきではないでしょうか。

「残業は美徳」という感覚を持っている人はここで一度立ち止まり、古い概念をアンラーンするときが来ているのです。

過去の成功体験から抜け出せない人たち

私はネットで複数のビジネスを運営している立場です。ビジネスをしていて、時々過去の成功体験が足かせになり、うまくいっていない人たちを見る事があります。

具体的に名前は出しませんが、ある情報商材販売者は「稼げるノウハウ」と称して長い間、ネットで販売活動をしています。販売している商材を見てみると、かつてはすごく有効だったマーケティングをパッケージにしているようです。かつては確かに、その方法で大きく稼げる時代がありました。しかし、 Google のアルゴリズムのアップデートにより、その手法はもはや使えないものになっているのです。今この方法を実施するとペナルティを受けてしまうので、 Google の検索結果に表示されなくなってしまう恐れすらあります。

しかし、彼は未だに「稼げるノウハウ」としてその情報商材を販売しているのです。私は「もうそれとっくに通用しないよ」と思わずいいたくなってしまいます。このように過去に荒稼ぎできた成功体験があると、それを未だに大事に抱えて「これこそが稼ぐ方法だ!」とばかりに販売してしまうわけです。

特にネットビジネスはかつて通用したノウハウが時間の経過とともにすぐに陳腐化してしまいます。新しいサービスが登場した直後というのは、ある種「無法地帯」みたいになっています。なぜなら法整備や規制が追いついていないために、最初の頃は「裏技的」な他者を出し抜く手法が存在するタイミングがあるからです。そのタイミングで、抜け穴を発見した人達は普通に使っている人を出し抜き、大きく稼ぎ、大きな成果を出すことができるわけです。

しかし当然そのような状況はいつまでも続きません。サービスのアップデートが入り、法整備の拡充により、ある時を境に全く使えなくなるというタイミングが到来します。その時にこそ古いやり方をアンラーンしなければもう一歩も先に進めなくなってしまうのです。

「古い情報や常識はさっさと捨ててしまいなさい」、そう言われて「わかりました」と捨てられる人はなかなかいません。なぜそうなってしまうかというと、「いまさら新しいことを学ぶなんてめんどうくさい」という心理的抵抗や、「自分はこれで大きな成果を出した」というプライドという原始的なものが障壁だったりするのです。

どうすればそのハードルを乗り越えてアンラーンできるのでしょうか?

古い常識や情報をアンラーンする2つの方法

古い常識や情報をアンラーンするには2つの方法があります。

1.現実を直視せよ!

まず現実を直視することです。現状が「心から満足にいく」と感じるのであれば、アンラーンする必要はないでしょう。しかし、「この先には未来がない」「他にもっと有効なやり方があるかもしれない」とそのように思うのであれば、まずは現実を冷静に直視することです。そして不要なものをアンラーンする決意をすることです。

2.ホンモノを見る

本物を見ることで古い常識や概念、情報をアンラーンすることが出来るでしょう。

私は起業前から投資をしてきましたが、「投資といえば株式投資」という強い思い込みがありました。株式投資以外は大きなリスクや資金が必要であり、手を出すべきではないと思っていたのです。しかし、今は資産運用の中心を仮想通貨に移行しています。仮想通貨が大いに話題になっていた頃、私はかなり懐疑的に見ていました。多くの人が考えているのと同じく、「詐欺でしょ。実態ないでしょ。もうすぐなくなるでしょ」と。

しかし、年初からの仮想通貨の下落相場で、資産を数十倍にしたり、仮想通貨資産を数十億円以上持っていたり、取引所のオーナーをやっていたり、海外にマイニング工場を持って手広くやっているプロを目の当たりにする機会がありました。彼らから直接、仮想通貨投資についてじっくりと話を聞いた結果、「仮想通貨投資もありだな」と考えを切り替える事が出来ました。

現在は長く低迷している仮想通貨市場ですが、年末の大暴落で多くの人が離れてしまった時だからこそ、真剣に取り組むべきだと思うようになりました。いま、仮想通貨投資をやるのがいいかどうかは別にして、ホンモノを見たことで「投資=株式投資」という思い込みをアンラーンすることになったわけです。

今は情報や常識の変化が非常に早いですから、現在は有効な情報や知識であってもどんどん陳腐化していきます。いつまでも大事に、過去の常識を抱えているのは「痛い人」なので、情報や常識こそアンラーンという断捨離をするべきなのです。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。