改憲は軍国主義への道――朝日新聞を筆頭にした左翼メディアの洗脳によって、国民にはこうした先入観が強く、改憲に反対する有権者が未だに半数近くいる。
ここで今一度、自衛隊が軍隊として認められた場合に、現実としてどんな変化が起こるのかを考えたい。文民統制が確立された現代日本で戦前の統治機構が戻るなどという荒唐無稽なことが起こるはずもない。自衛隊が軍隊と正式認定されたとしても、基本的な政治システムは何も変わらない。
一方、外交において日本は大きな武器を手に入れることとなる。
米軍頼みの専守防衛によって、日本は軍事費を軽減できた一方で、思いやり予算執行や米国にノーと言えない外交を続けてきた。親中政策を行った政権が軒並み短命だったのも、陰に陽に米国の影響力が働いた結果と言える。
米国に逆らえないだけならまだしも、軍事力行使の選択肢がない弱みは、中国や北朝鮮、ロシアといった周辺の独裁国家にとって最大限利用価値のある強みとなってきた。独裁国家は自国にメリットのない日本の忠告は一切無視するが、米国との関係が行き詰まったときにだけ日本を米国の出先機関としてカウンターパートに迎える二重基準で日本を利用し続けてきたのである。
これらの国にとって日本は米国のポチという位置付けであり、対等な国家とは見なしていない。日本に対してどんな屈辱を与えても、所詮は米国頼みでしか威圧できないことを知っているからだ。近年はこうした独裁国家に韓国という『ならず者国家』も同列して日本を貶めている。
戦後70年間、核爆弾が世界の戦争抑止力になってきたのは、核の破壊力そのものではない。相手を追い詰めれば最後には自分たちも破滅するという反射鏡の役割を果たしてきたからである。
人口規模が百万人以上いる国で自国軍隊を持たない国は、世界に類例がない。日本も自衛隊という軍隊を実質的には持っているが、軍隊と認めないことで、外交上利用できる交渉相手国への威圧というカードが封じられ、日本の軍事カードは現実的に米国のものとなってきた。
左翼メディアは憲法での軍隊明記の意義を否定する。だが、国防軍として認めれば、日本は周辺独裁国家から、少なくとも米国の同盟国としてだけの顔ではなく、いざとなれば日本独自の判断で行動するかもしれないという警戒感を抱かせることができる。それは外交上、選択肢を一つ増やし、相手国を交渉の席につかせる大きなインセンティブとなる。
日本の戦後教育は平和の尊さを無邪気に教えるばかりで、理想と現実が著しく乖離する平和ボケ国家を作り上げてしまった。平和を維持するには、抑止力としての軍事力が必要不可欠である。戦争と平和は表裏一体なのである。
平和のために最も大切な現実を教えてこなかったために、国民の多くが「戦争への反省が日本に戦後70年の平和をもたらした」という誤った認識をもたらしてしまった。現実として日本を周辺独裁国家の侵略から守ってきたのは駐留米軍と米国の核抑止力と、そして自衛隊である。
こうした話をすること自体が、左翼メディアの信者だけでなく、与党・公明党を支持する宗教信者の拒絶反応も生む。それを中国やロシア、韓国は利用し、日本の領土領海の侵犯を許す結果となった。北朝鮮の日本人拉致を許し、未だに奪還できない惨状を招いている。
日本人が外交下手なのは、白黒はっきりモノが言えない曖昧さにある。軍隊でありながら、軍隊と言えない曖昧さは、全ての問題を中途半端にしたまま日本という国の存在感さえも顔の見えないものにしてきた。
改憲に着手する以前に、政府はまず正しい現実認識を説き、戦後何十年と解決できずに沈殿している諸問題の根源が、歪(いびつ)な国家のあり方に起因していることを訴える必要がある。