「ニセ医者」の見分け方 

松村 むつみ

「ニセ医者」は現在でもときどき摘発されます。9月には、Buzzfeed Japan Medical・朽木誠一郎記者の取材により、ネット上で「内科医 工藤」と名乗り健康食品を売りつけていた男が、医師ではないことが明るみに出されました。

また、以前には30年にわたりニセ医者が患者を診察していた例や、美容外科医として数千例の手術を行っていた例もあり、「ニセ医者」をめぐる事件というのはどうも定期的に起こるものであるようです。

いっぽう、「ニセ弁護士」というのはあまりききませんね。医師はアルバイトを多く組み合わせれば、年収二千万程度は見込め、講演などでも需要のある職業ですし、医師と患者の間にはきわめて大きな「情報の非対称性」があり、専門家以外の人がニセ者を見抜くのはハードルが高いので、成り立ちやすいのかもしれません。

では、「ニセ医者」を見分けるのにはどうしたらいいのでしょうか。

1.厚生労働省検索サイト(医師等資格確認検索)

よく言われるのは、厚生労働省の検索サイトで名前を入れて、出てくるかどうか見る、というやり方があります。これはある程度参考にはなりますが、万能ではありません。これは医師による二年に一度の届け出をもとに作成されているデータベースであり、届け出は通常勤務する医療機関によって代行されています。ですので、医療機関が届け出を忘れてしまった場合やフリーランスの医師などはひっかからないことがあり、また、職場で旧姓使用をしている場合もひっかかりません。このデータベースで出てこないからといってニセ医者と決めつけるのは早計です。

2.とりあえずは「ぐぐる」

今の時代、誰かについて調べたいと思えば、だれしもがまずは「ぐぐり」ますよね。実は、医者というのは、ぐぐったときに、比較的名前が出てきやすい職業です。旧姓使用をしている人でも(筆者も、執筆は新姓で行っているのですが、医師の仕事は旧姓です)、医師として旧姓を使用しているのであれば、その名前が検索結果として出てきます。

検索結果は、勤務している病院のサイトのほか、主に、国内での学会発表や国内誌への論文発表が上位にあがります。あるいは、学会や専門医名簿が出てくることもあります。検索結果を見ると、その医師の専門がわかりますし、現在だけではなく過去にどの病院にいたのかもわかります。

複数の学会発表を行っていたり、専門医名簿に名前が載っている医師は、まずニセ医者ではありません。ニセ医者は、面倒くさいことはせずにとにかくお金を稼ぎたいわけですから、時間ばかりかかってお金にはならない学会発表や、専門医取得などはまず行いません。

また、ぐぐってみて、本人が「専門医」をうたっているのに、他にそれを裏付ける検索結果が得られないときには、「怪しい」とみていいでしょう。

3.難しいケースあれこれ

執筆などをしている人で、ペンネームを使っている場合には、その人がニセ医者かどうかをネット上で判断するのは難しくなります。大手出版社などから本を出している場合は、出版社が身元確認をしていると考えるしかありません。多くはそれで問題ないはずですが、わたしも執筆する際に、「医師免許提出」はどの会社からも求められたことはないので、百パーセントではないかもしれません。

あと、多いのは実在する医師になりすましていたり、勝手に名前を借りている場合です。実在する医師の専門分野と、ネット上のサイトでうたわれているテーマに解離がある場合は、インチキを疑ってみましょう。

また、本当に医師免許を持っているけれど、ぐぐっても殆ど名前が出てこないケースはまれですが存在します。研修医など医師になりたての場合(ただしこの場合は、大病院勤務がほとんどなので、厚生労働省の検索にはひっかかります)、ネットが発達するより前に常勤や大病院での勤務をやめている場合(年配の医師で、開業をせず非常勤で働いている場合が当てはまります)、あるいは免許はとったけれど、その後研修していない医師(ペーパー医師免許?)などがあげられますが、こういったケースはいずれも、例え本物であっても医師としての能力に問題があることが考えられます。

ときおり問題になるニセ医者。滅多に遭遇することはないでしょうが、何か違和感を感じたら、上記の方法で確認してみるのもひとつの方法です。