困ったときに何の本を読んだらいいかを導いてくれる本!

先行き不透明の時代に、その他大勢から抜け出して生き抜くためには、何を学び選ぶべきなのか?その一つが読書である。今回は、『入社3年目までの仕事の悩みに、ビジネス書1万冊から答えを見つけました』(キノブックス)を紹介したい。

著者は大杉潤さん。日本興業銀行で22年間勤務、新銀行東京の創業メンバーを経て2015年にフリー転身。現在は、コンサルティング業を中心に活動中。年間300冊の多読生活を35年間継続中。その数は合計1万冊を超える。

ソースはすべてビジネス書

論文などを作成する場合、最初に研究テーマを設定する。研究テーマの有用性を検証するために先行研究をおこない、作業仮説を設定して実証をする。本書はビジネス書になるが手法はほぼ同じである。有用性を検証するソースをビジネス書に限定している。さらに、引用部分を明瞭にしている点が興味深い。

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<書籍P14~P16。本記事用に一部改編>
報告書や会議の議事録などを書く仕事を頼まれることがある。しかし、「もっと短時間で、簡潔にまとめて書きなさい」と注意された。あなたはどうすべきか?

「報告書や会議の議事録、企画書など、ビジネス文書を書く機会は多いと思います。ここで要求されるのは、分かりやすさと読みやすさです。学生時代に書いていた論文とは違うのです。さらに、日々多くの文章を書く必要があるため、スピードも求められます。できる限り時間で書き上げる必要があるのです。では、どのようなことに注意して意識すれば、分かりやすく読みやすい文章を、短時間に書けるでしょうか。」(大杉さん)

「大切なポイントは、『(1)論理展開をしっかりと組み立てる』『(2)一文を短くする』『(3)できるだけ改行する』『(4)書く前の準備をしっかりする』以上の4点です。」(同)

『(1)論理展開をしっかりと組み立てる』とは?
「リズムのいい文章は、なぜ違和感なくスラスラと読めるのか?」もう答えは簡単である。支離滅裂なところがないからだ。論理の軸がバッチリ定まって、論をうまく展開できているからだ。-古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)

『(2)一文を短くする』とは?
読みやすい文章をこころがけるとき、これもまた大きなポイントになってくるのが、文章の長さ、ひとつのセンテンスの長さだと思っています。-上阪徹『書いて生きていくプロ文章論』(ミシマ社)

『(3)できるだけ改行する』とは?
「改行がすくない文章は見ただけで息がつまる。改行は、論理の展開の段取りごとに行うのが本質的なことで、一つのまとまりを述べ、それを踏まえて、階段を一段昇るように、次のまとまりに移るとき、改行する。-中沢道明『どんなテーマも書けるパターン文章術-4つの発想と11の戦法』(かんき出版)

『(4)書く前の準備をしっかりする』とは?
私は段取りを良くすることなどで、効率的にアウトプットできるようになりました。すばやくアウトプットするために必要なのは、書く前の段取りをしっかり行う、書くときは集中して全力で書く、書くことに慣れる-小宮一慶『小宮式アウトプット術』(すばる舎)

計148冊からの引用を軸に、読者のお悩み解決読み物としてまとめられている。ビジネス書の範囲も、文章術からノート術、時間術、実用から自己啓発まで幅ひろい。

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ビジネス書の醍醐味が理解できる


筆者もビジネス書を11冊上梓している。ビジネス書の面白さは、著者の技術や能力が1冊に凝縮されている点にある。価値のある一行に出会えたら申し分ない。本書では、書籍の範囲が多岐にわたっている。大杉さんの考察も加えられており読者を飽きさせない。

ビジネス書のなかには、著者の考えを「押し付ける」ようなものが少なくないが、本書ではバランスよく整理されている。1万冊のビジネス書を読破している大杉さんならではの解説も興味深い。困ったときに何の本を読んだらいいかを導いてくれる本。新任管理職や新入社員の人に読んでもらいたい。

PS

拙著『即効!成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)は、発売2週間で3刷と好調です。応援していただいた皆さまに御礼申し上げます。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所・研究員